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お金がないから葬儀はできない、は本当か




世間が不景気だからしょうがない、
と価格競争に参戦してしまった葬儀屋さんは多いと思います。

前回

をご紹介しましたがこの本と

この本のデータをもとにちょっと考えてみたことを
(宗教と社会性の問題は一旦横に置いといて費用の問題に絞って)
述べてみます。

平成19年度の日本銀行の調査によると
日本人全体の個人金融資産(土地や家などの資産は含まれていません)
は1400兆円であり、その58%を60才以上の方が持っています。
ということは1400兆×58%=812兆円
総務省統計局のデータによると同時期の60才以上の人口は3576万人なので
812兆÷3576万人=2270万円で
60代以上の方々の一人あたりの個人金融資産は2270万円
ということになります。
そして今後、これ以外に厚生年金受給者の方には、
毎年平均193万円が支給されます。

次に支出を考えてみましょう。
総務省のデータでは
60才以上の世帯(個人ではない)の年間消費支出の平均は276万円
です。
ある夫婦が85才まで生きるとして(妻の厚生年金支給分は除外しても)
60才以降の収支は
193万円×(85-65)年+2270万円×2人分-276万円×(85-60)年=1500万円
個人金融資産に年金支給分は多少含まれているかもしれませんが
計算上はかなり甘く見積もっても老夫婦で1500万円の余剰貯蓄があるわけです。
これ以外に人によっては数千万単位の退職金が加わる場合も多いでしょう。
終末医療に2人で600万円かかるとしても、
(実際は、日本人の好きな医療保険と、高額療養費支給制度と医療費控除が機能するので、よほど保険外治療を行わない限りそんなにかかりませんが)
冷静に考えるとお葬式は出せるくらいのお金はあるのではないでしょうか。

と、ここまで書いたところで、2点ほど異議あり!
という方がいらっしゃると思います。

などを御読みになっている方だと思います。

1点目は
1400兆円っていったところで
その多くはごく一部の大金持ちが持ってんじゃないの?
という反論ではないでしょうか。
たとえばアメリカの場合、
全人口の上位1パーセントに当たる大金持ちがアメリカの資産全体の37.1パーセントを所有しているそうです。

3年前にメリルリンチが行った調査によると、
金融資産を一億円以上持つ個人は世界中に950万人いたそうです。
そして、そのうちの147万人は日本人でした。
そしてその147万人の日本の大金持ちが持つ金融資産の合計は400兆円
だったそうです。
つまり1400兆円の個人金融資産のうち1000兆円は、
大金持ちではない中の上のクラス(資産1億円以下)が分散して持っている

ということになります。
日本の場合、リタイア層は幅広くそこそこお金持ちなのです。
(もちろんこのデータの精度も検証する必要はありますが)

2点目は
「老人が金持ちでも、施主(葬儀費用を支払う人)となる世代は金がなく、相続分を別の消費活動に使ってしまうのではないか」
という反論があると思います。
しかし日本は高齢化が進んだため
遺産相続者の平均年齢は67才
(父親が亡くなったと仮定すると、妻・子の平均年齢)だそうです。
(引用元:デフレの正体)

その世代になって相続したなら、
家やら車を購入したりという消費活動にお金を使うとは思えません。
やはり施主もそれなりの貯蓄があるということです。

年金問題などの将来の経済的不安による支出の抑制というのはありますが
上記の現状を理解してもらえば、一般論としての
お金がないから葬儀代が払えない
という言説を
葬儀社側が鵜呑みにするのはどうでしょうか。

葬儀費用の下落は不可逆的傾向が強いので、
一度下がってしまった葬儀費用を上げることはなかなか難しいと思います。
葬儀業界の人材レベルを維持できないくらいに葬儀費用が低下する前に
何か打つ手はあるのではないでしょうか。

打つ手って何?
と聞かれると困ってしまうのですが(^^;)
例えば この記事などはいかがでしょうか。
(参照ページ:競合他社と仕事を取り合ったとき2

ま、ちょっと決定力には欠けるんですけどね(^^;)

追記
こんなページも見つけました。
http://www.research-soken.or.jp/reports/economic/pdf/number07.pdf











9 件のコメント

  •  今号のSOGI(119号)の小谷みどりさんのリポートを読むと、高齢者の所得・貯蓄格差の激しさについて触れられています。あるところにはあるけれどないところにはない、ということです。また厚生年金はともかく国民年金は年80万程度ですから、ここも平均で捉えるのは危険な香りがします。
     特に格差の激しい単身世帯が地方よりも都市部に多いだろうということを考えると、競争の激化している都市部で「みんなお金がないって言ってるんです」と感じる感覚そのものは間違っていないのではないでしょうか。それもまた、日本消費者協会の言う「平均額」ともなるととてもとても…(汗

     しかしまあ、確かに現場の感覚では「それなりの家庭が」「それなりのお金を持っている」とは思いますよ。問題は、だからといってたくさん持っている人に「ない人の分まで出して」とは言えないという点にあるのでしょう。それに現在の思想の主流は自由経済主義に寄っているでしょうから、「持っているんなら十分に金を出せ」とも言い難いですし。
     実は「不明瞭な祭壇料金」はその点に関しては利点があったんですよね。良く使えばいわゆる累進性を持たせられた。社会が全体としてもう一度その方式を受け容れられるなら話は変わってくるかもしれませんが、現状を見る限りはまず無理でしょう。

  • 高見様、
    小谷さんのレポートは見落としてました。
    ありがとうございます。

    確かに「単身の」高齢者の方の生活は大変なことが多いようですね。
    でちょっと調べてみたところ
    http://www.ipss.go.jp/pp-ajsetai/j/Hprj98/NL_gaiyo.html
    全国では
    65才以上の世帯のうち単身者が占める割合は2010年の時点で
    29.3%のようです。

    同様に東京では
    http://www.toukei.metro.tokyo.jp/syosoku/sy-data.htm
    (2010年の東京都の65才以上の世帯の総数は1679千世帯
    その内単独世帯は629千人なので)
    65才以上の世帯のうち単身者が占める割合は2010年の時点で
    37.4%ですね。

    半分水が入ったコップを見て
    「もう」と思うか「まだ」と思うか、というところだと思うのですが
    私は「まだ」派(楽観主義?)です。

  • ご無沙汰してます。 

    物理教師様、先日『だから葬儀は必要だ』を読み終えました。何かお薦め書籍はありますか?『お父さん葬儀はいらないなんて言わないで』でしたか? 

    今度、買ってみようか迷っています。

    季節の変わり目ですので体調管理を怠らない様にお気をつけ下さい。

  • コップの水の喩えは私もどちらかといえば「まだ」と思うほうなのですが、コップに入っているのが必ずしも「良いもの」ではなく「苦い液体」である場合もあるのでしょうね。今の日本にはまさにそういう感情が澱んでいるかのようです。楽観…というか何事も前向きに考えていきたいところなのですが(汗

  • これらの問題は、私の講演や講義で使う問題です。
    現在、国内の貯蓄率は減少の一途を辿っており、高齢者の預金頼りであった国債の購入も海外(主に中国)となり、国自体の危機となっています。
    アメリカの国債も中国が最保有国であり、パワー・バランスが大きく崩れています。

    さて、今後の日本では2025年には高齢者にとって非常に厳しい時代に入り、一昨年から大がかりな施策が開始されています。
    後期高齢者保険の廃止、70~75才の自己負担料金の倍増(1割から2割)、実質社会保険料金の増額に加えて、消費税額の大幅増額(恐らく17%位)が始まるために、高齢者世帯がセーブするのは当然です。

    仮に預貯金があっても、将来に対する不安や社会の不安定性が高い限り、「買い控えや、無駄な出費の抑制」が進むでしょう。
    冠婚葬祭は安定した産業ではなく、社会状況に左右されやすい部分が強いと思います。

  • prof様、お待ちしておりました(^_^)
    > 冠婚葬祭は安定した産業ではなく、社会状況に左右されやすい部分が強いと思います。
    同感です。
    基本的に「衰退産業」だと思っています。
    http://kangaerusougiyasan.com/TAGS/%BB%E0%CB%B4%BF%CD%B8%FD%C5%FD%B7%D7
    今年も経済産業省のアンケートが行われ始めたようですが、
    かなり厳しい結果になると思います。

  • アジア各国の葬儀学部教授や大手CEOとの会議を行いましたが、各国とも葬儀の多様化は進んでいますが、売上規模は「明らかに縮小している」との話でした。
    これはアジアに限らずにアメリカでも顕著であり、従来からのルーティン的な葬儀ではなく、顧客ニーズに添った葬儀が必要との当り前な結論となりました。

    顧客ニーズに合致した葬儀は基本でしょうが、どこまで顧客(依頼者)の意に添うかは非常に難しい部分があります。
    顧客の意に添えば添うほど、葬儀の円滑な施行が出来ないのではとの懸念もあります。
    最終的には「顧客満足度」が重要なのでしょうが。

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