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東武セレモニーが急成長した理由




今回紹介するのはこの本。

なぜ、パワハラ上司が葬儀社で、理想 のリーダーに変われたのか?

天下(あまくだ)って葬儀社のマネ-ジャーや役員になる人は必読です。

著者略歴と本の内容

著者の大垣氏は明治大学を卒業して東武鉄道に入社。出世コースを歩むも、次第に上から目線のコントロール型のマネジメント(いまで言うパワハラ)がうまくいかず、とうとう同じタイプの上司と衝突。40代で東武鉄道の子会社の葬儀社、東武セレモニーの社長に左遷
しかし、そこでリーダーシップの本質をつかみ、倒産寸前の赤字会社であった東武セレモニーを二年半で、純益20%の優良会社に再生させる。
3年後本社営業部長に返り咲く。その後㈱パスモの社長→東武鉄道の取締役に昇進し東京スカイツリーの広報責任者→㈱東武カードビジネスの社長→現在コンサルタント。

Kindleのみで250円という価格からも分かるように、ページ数も少なく1時間ほどで読めます。
おそらくコンサル活動を補完するための自費出版かと思いますので、多少盛っているところもあると思うのですが、楽しく読めました。

一番おもしろかったところ

一番おもしろかったのは、葬儀屋に対するこの感想。

「上司の指示は簡単に無視するし、本当に最悪です。何を言っても聞きません。社長の権威とか全く通用しないのです」

特に昔気質の葬儀屋さんアルアルの世界ですよね。
葬儀屋という人種は、どんなに肩書きがあろうが、他業種からきた遺体に触れたことがない人間の言うことは、絶対に聞かないのです。
もしくは露骨な面従腹背
威圧的に部下に無理矢理言うことをきかせてきた著者も、この仕打ちによって、コントロール型のマネジメントを手放すのです。

パラダイムの転換です。

そして次第に葬儀の現場仕事に敬意をいだくようになっていきます。

なぜ私がこの部分を評価するのかというと、私も途中まで全く同じ経験をしたことがあるからなんですね。部下の立場としてですけど。

ある日他業種から役員待遇のエリアマネージャーがやってきたのですが、これがまさしくパワハラ型上司(当時はまだパワハラという言葉が一般的では無かったと思いますが)。
そして葬儀社に天下ったことを恥だと思っていました。(社外の人と挨拶するとき、言い訳のように前にいた会社の名前を必ず言っていた)
現場のことを全く知ろうとしないで威張り続けて、最終的には入社1年目のスタッフにさえバカにされる始末。
そんな現場の空気を感じて、敵対化し、ますますパワハラがはげしくなっていく悪循環。社員の間では、スケジュール帳に「怒」という文字を書き入れて、怒鳴る日を事前にきめているのでは、と言われる始末。
最終的にパワハラが原因で追放となりました。

彼は大垣氏のように変わることができなかったのです。

同じような経験をした葬儀屋さんは結構いると思います。実際は大垣氏のように変わることができる人の方が珍しいのですよ。

最終的に大垣氏は

経営者としての仕事は理念を立てること、つまり「お客さま第一」。そして、リーダーがその理念を実際に行動で示すこと。具体的な方法は現場をよくわかっている従業員自身が判断する

というスタイルに改めます。

葬祭業の素晴らしさに気づき、現場にも顔を出し、社員と一緒に喜怒哀楽を共にするスタイルで成功を収めるのです。

同意できないところ

とはいえ、僭越ながら同意できないところが2点ありました。

遺族が高い物にしてくれと言っているのに、わざわざ安いものを勧める必要はないだろうと。それを担当者に質問すると、「棺などは、実際はほとんど差がないので、お客様のことを考え、こちらの棺を勧めました。」という答えが返ってくるようになってきました。これが本当の顧客満足である事を、私は社員から学ばせてもらいました。

いや、これは「ちゃんと違いのある商品体系にする」が正解では。高い商品を買っていただいた顧客をだましていることにもなります。

アンケートが必要だと思っていたので、「悪いことが書いてあっても絶対に怒らないし、査定にも影響させない」と約束をして、半ば無理やりに始めたのです。その約束はちゃんと守りました。時にはひどい内容のものもあったのですが、それは誰にも話さず自分の胸だけに留めておきました。

悪いことをしたのなら、ちゃんと叱るべき。また個人名は挙げなくても良いが、失敗事例は共有すべき。顧客アンケートを活かさないのは、「お客様第一」主義と矛盾します。

急成長の理由

さて東武セレモニーの急成長の理由ですが・・・

倒産寸前の赤字会社(債務超過)であった会社を二年半で、純益20%の優良会社に再生

この数値をそのまま信じるとしましょう。しかしこの利益アップの理由がどこにも書かれていないのです。
債務超過から純益20%は、ちょっとやそっとのことでは、実現できません。

件数は増えたと言っているんですが社員は「固定給が少なく歩合部分が大きい」給与体系だったらしく(ちゃんとした鉄道会社の子会社で、かつ需要に波がある葬儀屋で、この仕組みはヒドい)件数が増えたところで固定費比率はそんなに下がらないはず。

本社借り入れで会館を建てるというウルトラCを使っていないとすると、実は結構リストラしたんじゃないでしょうか。どうしようもないダメ社員が余っていたようですし、クビを切った方がクオリティも上がるし財務内容も改善させられるはずです。
会社が赤字で債務超過で、本人の勤務態度が悪いなら解雇要件も満たします。グループ会社の閑職に異動辞令を出すということも可能です。

もし私の想像が正しいなら、著者は左遷されたと言っていますが、人事畑の人間を社長にした辻褄(つじつま)が合います。

追記:東武鉄道は東武セレモニーを手放していた

しかしこの東武セレモニー、現在の東武鉄道のIR情報を確認してみると衝撃の事実が。
どうも今年2020年には東武鉄道の子会社ではなくなっているのです。

2020年の東武鉄道の有価証券報告書
「当社が全株式を売却したことにより(株)東武セレモニーを連結の範囲から除外いたしました。」
の文言が・・・

2017年の株主配付資料では所有式場の「東武レクイエム聖殿深谷」のリニューアルを行ったばかりなのに、一体何が起こったのでしょう。
東武セレモニーに関するセグメント情報が無いので、深い事情は読み取れません。

現在はホームページ(https://www.tobu-ceremony.jp/)も消えています。

ためしに、所有していた式場に電話してみました。

電話に出たスタッフの方の話では

・筆頭株主は東武セレモニーではない。誰のものかは言えない。
・元いた営業所のスタッフは退職した
・葬儀会館はそのまま運営を続けている

とのこと。

最初の電話で「東武セレモニーさんですか?」と聞いたら、ハイと言われたんですけどね(笑)

深読みすると、東武鉄道が東武セレモニーを手放したから、大垣氏はこの本が出せたのではないでしょうか?

鉄道会社の一番出来の悪い社員が、ここでは一番出来の良い社員なのです。

など15年前とはいえ結構ひどい内情が暴露されていますので。

現実の後味が悪いとはいえ、この本はおすすめです。
繰り返しになりますが天下って葬儀社のマネージャーや役員になる人は必ず読んでください。

 











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