帝国データバンクのレポートから葬儀業界の現状を考える

帝国データバンクから2018/9/27にリリースされた最新レポートから現在の葬儀業界を考えます。
葬儀業者 2163 社の経営実態調査

葬儀業界には信頼できる統計データはありません。
監督官庁が存在しないことが大きな原因です。

経済産業省をもってしてもこのレベル。
経済産業省の特定サービス産業動態統計調査を真に受けてみる | 考える葬儀屋さんのブログ

業界紙はこれだし
業界紙フューネラルビジネスの葬儀社売上ランキングの信憑性が低いと思う理由 | 考える葬儀屋さんのブログ

帝国データバンクに関しては、2011年に今回同様のレポートを出したとき、リード文の誤りを指摘したことがあります。
帝国データバンク「葬儀業者の経営実態調査」の情報操作?について | 考える葬儀屋さんのブログ

とはいえ、データの信頼度で飯を食っている企業ですから、統計値に関しては比較的マシな方だと言えるでしょう。

2014 年度(2014 年 4 月期~2015 年 3 月期)から 2017 年度(2017 年 4 月期~2018年 3 月期)まで 4 期連続で決算の年収入高が判明した葬儀業者 2163 社を抽出し、収入高、地域別、損益別に分析した。

ちなみに全国の葬儀社の数は約4000~5,000程度と言われていますから、2,163社というのは約半数をフォローしているということです。
(今回の調査は互助会やJAも含んでいます。)
恐らく葬儀社規模ランキング上位半数をフォローしているということでしょう。

今回のレポートを要約すると
・全体の売上は微増(1.0%)
・小規模業社は減収
・大規模業社は増収
ということです。


確かに葬儀業界内にいる人間としては、実感と合致していますが、もう少し細かく見ていきましょう。

大規模業社は堅調といっても、葬儀業界は家族経営の小規模企業が企業数のほとんどです。
売上が伸びているのはだいたい従業員数250名以上売上50億円以上クラスの葬儀社であり、今回の調査では30社(全体の1.4%!)ほどしかありません。

大多数を占める従業員10名程度の葬儀社で横ばい、3人程度のところは明らかに下降しています。
今回対象は2,163社でしたが、調査対象とされなかった葬儀社は売上1億円以下の家族経営クラスと考えられますから、残りの数千社も売上を下げていることでしょう。

売上が横ばいの中堅葬儀社も
死亡人口の増加の伴い葬儀件数は伸びているのに、売上は横ばいということは葬儀単価は下がっているということです。
ということは固定費率は上がっているはずで、営業利益は下がっているはずです。
つまりクラスタとして増益の可能性があるのは100億円以上の上位14社のレベルだということです。

ところでこのレポートは「大手はM&Aで売上拡大に繋がった」と述べていますが、この分析だけでは浅いです。
100億円以上クラスの専業葬儀社ではM&Aは近年ほとんど行われていないので、ここでいうM&Aは互助会の合併を指しているのではないでしょうか。
ここ数年で潰れそうな互助会を救うため体力のある互助会と合併させるということが経済産業省主導で行われました。
本当に互助会は立ち直っているのか? | 考える葬儀屋さんのブログ
つまり企業規模は大きくなったが、生産性は希薄化したということで、たいして景気のいい話ではないのです。

それから一企業として「小さなお葬式」のユニクエストを大幅な増収例として採り上げています。
不愉快です(笑)
「小さなお葬式」のあの事件を振り返る | 考える葬儀屋さんのブログ

ユニクエストは葬儀社じゃなくて葬儀社ブローカー(ネットで集客した顧客を葬儀社に送客する)として区別するべきでしょう。
小さなお葬式は受注件数を公表すべき | 考える葬儀屋さんのブログ
ここは、葬儀施行を実は地元の葬儀社にやらせています。
ただし「小さなお葬式」名義で施行し、ユニクエスト側で集金しているようです。
財務諸表が見られないので正確なところは分かりませんが、紹介手数料を葬儀社から2割取っていると仮定すると、100万円売り上げて、20万差し引いて80万円を葬儀社に渡しているというお金の流れでしょうか。
つまり売上は大きくても販売費及び一般管理費の比率がかなり大きい、つまり売上高営業利益率はそれほど良くないはずです。
いやそれ以前にここは互助会の子会社だから連結会計対象企業のはずで、ということは親会社の互助会の財務諸表との関係はどうなっているのでそうか?
互助会の財務諸表も公開されていないので、これもよく分かりません。

まとめると
・中小企業は減収減益傾向
・大手企業は増収だけど増益かは怪しい
ということです。

葬儀業界は衰退産業であると10年前から私は言っていますが
葬儀社に就職したい!転職したい!人に葬儀屋さんがアドバイスをします(完全版) | 考える葬儀屋さんのブログ
将来的にこの傾向が改善される要因は思いつきません。
ただ流れとして、このまま行くと中小の弱体化の方が早く進むので、大手が中小のシェアを奪っていくでしょう。

(追記)
衰退産業なのにおまえはなぜ葬儀屋さんを続けているのかと思われるかもしれませんが
・葬祭業が好きだから
・葬祭業が得意だから
・衰退産業でも伸びる企業はあるから
という理由です。