小学館「エンディングノート」の欠点

最近小学館から「エンディングノート」が発表されました。

 

かつてエンディングノート市場は
「もしもノート」

が頭一つ飛び出していた状態でした。

しかし
コクヨS&T エンディングノート<もしもの時に役立つノート>
が発売されてからは、これが現在独走態勢のようです。

たしかに以前の記事でも紹介したように
(参照記事:エンディングノートの正しい選び方・書き方
ツボを押さえた構成やブランド力において
現在最もおすすめのエンディングノートであると言えます。

さてこんな現状で
小学館のエンディングノートは
この一角に食い込むことができるのでしょうか。
コクヨのエンディングノートと比較しつつ
検証してみます。

まずこの小学館のエンディングノートの帯には
「いちばん書きやすくて いちばんわかりやすい」
と書かれています。

これは私に言わせると違います。
すくなくとも、いちばん書きやすい、に関しては。

製本の問題で言うと、コクヨのエンディングノートは文字通り、作りがノートなので
見開いた状態でも平面のため、ストレス無く記入することができます。

一方のこの小学館のエンディングノートは
薄いとはいえハードカバーの書籍タイプです。
ハードカバータイプのエンディングノートは一様にそうなのですが
中央の綴(と)じしろ付近では、ページが湾曲してしまうので
書き込みづらいのです。
この小学館のエンディングノートにも若干それを感じてしまいます。

実際にモニターに記入してもらってテストしたとうたっているのですが、
この点に関しては意見が出なかったのでしょうか。
もしかすると、高級感を出す=値段を上げる
ことを重視したのかもしれません。

次に内容です。

内容は両者ともほとんど同じです。
エンディングノートの正しい選び方・書き方」で書いたように
基本的に書きこむ項目は、
どのエンディングノートでもそれほど大差ありません。

強いて言えば、
小学館のエンディングノートはコクヨのエンディングノートと比べると

・自分史のページが多い
・友人の連絡先に写真を貼る欄がある(←でもこれ、実際は貼らないと思う)
・お葬式に関する記述がヘン
(↑これは私の専門のため話が長くなるので、文末で詳しく解説します。)
という点が特徴だと思います。

次に値段です。
コクヨのエンディングノートは文房具扱いだからでしょうか、
参考価格は1,470円なのですが
アマゾンでは割引されて600円(送料入れても1,200円)
くらいから販売されています。
一方小学館のエンディングノートは書籍扱いで、1,680円です。

というわけで、小学館のエンディングノートは平均以上のクオリティではありますが
私はコクヨのエンディングノートを購入することをお勧めします。

以上が結論です。

ノート

さてここからは上記の文章の中で触れた
・お葬式に関する記述がヘン
ついて説明していきます。
斜字は引用した部分です)

葬儀の内容、予算、宗教、戒名、香典を受けるか否かについて、
ことあるごとに
選択肢の一つとして

家族または○○さんに任せる

という欄が登場します。

「家族または○○」ということは○○には家族以外の人が入るのでしょう。
こんな漠然と決定者を増やすだけの選択肢があったなら、
葬儀の打合せは、意見がまとまらず大混乱でしょう。
こういうことは最終決定者の名前のみを書かせるべきです。
もしくは優先順位をつけて複数の名前を書くか、です。
(ちなみにコクヨのエンディングノートの場合は
「準備を取り仕切って欲しい」一人の名前を書くようになっています)

このエンディングノートは
「各分野のプロ」が内容を徹底吟味
したことがセールスポイントらしいのですが、
いったいどこの葬儀屋がこんないい加減なアドバイスをしたんだろうと巻末を見てみると・・・

「葬儀」分野監修 佐々木悦子(ささきえつこ)
NPO法人ライフデザイン研究所副理事長。単独で
24時間365日「葬儀お墓の電話相談」をした経験
をもつ葬儀お墓のスペシャリスト。

あー、編集者さん、やっちゃいましたか(^^;)

相続は弁護士に、介護はケアマネージャーに、社会保険は社会保険労務士に、税金は税理士に
つまり他の分野は「実務」経験者に執筆させているのに
葬儀の分野だけは、「葬儀実務経験者」に執筆させていない。

確かに執筆活動ができる人材が少ない葬儀業界にも責任の一端はあるのですが・・・

以下こんな調子で続きます

予算
口一般的な金額にしてほしい

「一般的な」葬儀費用っておいくらでしょうか?
まさか日本消費者協会の数字を持ち出すつもりですか?
(参照ページ:マスコミが報道する葬儀費用のウソ

戒名(法名・法号)
口標準的な戒名をつけてほしい
口準備している費用(55ページに記入)で、よい戒名をつけてほしい

「標準」的な戒名って何?
「院居士・居士・信士」の真ん中の居士が「標準」ってこと?
また準備している費用に関しては

口預貯金や保険金などを使ってほしい

というようなざっくりとした表現だし、
そもそも葬儀費用と合算費用になっているわ、
戒名だけのことを言っているのか御布施全体の話なのかはっきりしないわ、
残された家族は、戒名にどれだけ費用をかければいいか
実際は困ってしまうと思いますよ。

危篤
知らせる目安は本人を中心として三親等以内

「三親等以内」は余計なお世話では

検視を受けて、「死体検案書」を受け取ります.

検死(検案)も忘れないでね。

遺体の腐敗を進ませないように、冬は暖房を切り、夏は冷房しておきます。

こんなことしたら、故人のそばにいたい遺族は大変でしょ。
熱風や冷風が故人に直接当たらないことに気をつければいい。

葬儀社(有料の場合も)または親族に依頼して死亡届を市区町村役場に提出し

葬儀屋が有料で死亡届を出すのは法的にはグレー。
相続分野を執筆した弁護士さんも葬儀の分野は目を通さなかったみたい(^^;)

遺体を家族が洗い清める「湯かん」をしたあと

必ず湯灌をするわけではないし、家族がするとも限らない

通夜
仏式の場合は僧侶を呼び読経をしてもらい、焼香をしたあと、喪主が挨拶し、

通夜のあと喪主が挨拶するのはスタンダードではなく
ローカルルールでは?

・家族葬
(中略)自宅でも可能ですが、その場合は町内会を通じて家族葬であることを告知しておくと、
葬儀後もスムースです

とは限りません。
会社の場合は総務部を通じて家族葬であることを伝えた方がよいかもしれませんが、
町内会の場合
それでも参列した方が良いのでは、と判断されて
かえって参列者を増やす結果になりかねません。
余計なアドバイスは書かないこと。

希望する葬儀の内容をあらかじめ打ち合わせて、葬儀社などで予約しておくことを「生前予約」といいます。

生前予約と生前契約ってそんな定義だったの?
と驚いたのですが、碑文谷創さんの記事を読むと
定義もまちまち、とういうのが現実のようです。

と、こんな感じでしょうか。

では最後にもう一度、
私はコクヨのエンディングノートを購入することをお勧めします。(^_^)

 

 




2件のコメント

死亡届を葬儀社が有料で役所に提出することについては、以前総務省に確認したところ「死亡届を葬儀社が記入するなどすれば当然に行政書士法違反だが、単に使者として提出を代行するだけであれば有料であれ無料であれ法の規制するところではない」という見解でした。行政書士会は反発していますが、一応問題にはできないようです。

はるさん、
ご指摘ありがとうございます。
本文の表現を少し変更しました。
数年前、「仏事」という雑誌である行政書士が、
君たち葬儀屋は知らないだろうが的な口調で
違法行為であることを上から目線で語っていて
じゃ実務をどうしろってんだよと思った記憶があるのですが
あれ、ポジショントークだったんですね。

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