葬儀業界と葬式仏教界の競争原理の違い 1/2




こないだ某大学の経済学部の社会経済学系ゼミに呼ばれました。
ベタな文化論で良かったみたいなんですが
ちょっと経済学ネタを取り入れて話してみた内容の抜粋です。
興味のある方はどうぞ。
あと抜粋なんで、ちょっと説明不足のところがあるかもしれません。
すいません。 
講義
お葬式の際の出費に関して
葬儀屋さんへ支払う葬儀費用とお坊さんへの御布施は
高すぎると非難の対象となりがちです。
確かに消費者にとっては同じ出費でしかありません。
しかし一緒くたにされてはいるものの、
その構造は異なるというのが今日の話のテーマです。

かつて
1万円の棺が10万円で売れたのは
なぜでしょうか?

葬儀屋が悪い奴だから?

違います。

もちろん悪い葬儀屋はわんさかおります。
しかしそれは原因ではありません。むしろ結果です。

葬儀業界は良くも悪くも自由競争の社会。
エネルギー産業や農業政策でたまに見られる自由競争をゆがめる公的な規制は
ほとんどありません。(良くも悪くも)
 
1万円の棺が10万円で売れるのは
「10万円で買う人がいる」から
です。

「葬儀屋のモラル」はもちろん絶対必要です。
でも需要曲線と供給曲線を描くまでもなく
10万円というプライシング(値付け)で買い手が付くなら、10万円で売るというのは
経済学上は極々当たり前の行為です。

ほとんどの消費者が正しい知識を取得して
同じ棺を10万円ではなく3万円で売っている葬儀屋さんと取引をするようになれば
棺の相場は3万円になります。
全く何の学習もしなければ相場は10万円のままです。

つまり消費者が出費を抑えたいなら
情報の非対称性を解消する、つまり正しい知識を取得し、
まっとうな費用を提示する葬儀社を選択する必要があります。

ではなぜ情報の非対称性は改善されなかったのか?
それは消費者側に情報、時間、ストレスの問題があるからです。
詳しくはこちら↓ 

(参考記事:葬儀という商品を購入するとき、消費者はなぜ不利なのか

 
これまでは情報の非対称性は
劣悪な葬儀社に有利に働いていました。
普通、市場に劣悪な商品がはびこると、
情報を持たない消費者は最終的に取引から下りようとします。
つまり市場の失敗が起きます。
でも葬儀業界では、
行きすぎたレモン市場が引き起こす市場の失敗は起こりえません。
なぜなら消費者は(たとえ直葬でも)
必ず葬儀屋さんの役務を購入しなければならない、
つまり取引を下りることができません。 
そして情報の非対称性のもとでは、良い葬儀社対して「逆選抜」が、
不利に働いていました。
消費者が情報を持たない(目利きができない)状況下では
たとえ社員採用や教育にコストをかけても、
良い葬儀社のクオリティは評価されないのです。

この逆選抜の状態を防ぐには
①公的権力によって規制するか
②(ゲーム理論上は)複数回の取引によって取引内容を最適化させる
③ネット上の評価市場を利用する
という手段が考えられます。
 
でも以下の体たらくなので・・・
①・・・葬儀業界には法的規制がほとんど無い。誰でも参加可能。
       (もちろん「生き残り」は大変ですが)
②・・・「複数回の取引によって取引内容を最適化させる」っていうのを
もう少し詳しく説明します。
初回で相手をだます取引を行うと
初回は大幅な利益を得ることことができます。
しかし取引が多回数行われる状況(普通の市場取引はそういう場合が多い)で、
初回にだますと2回目以降は取引をしてもらえなくなるので、
長期的には不利となります。
そのため複数回の取引が行われる状況では
誠実な取引をさせる強制力が働くということです。
でも御存じの通り、葬儀は2回目以降の依頼機会が発生しなかったり、
数十年のスパンが空いてしまったりすることが多々あります。
そのため②の方法も効きません。
③・・・ネット上の評価市場っていうのは、
例えば楽天市場のホテル評価なんかをイメージしてもらえば分かりやすいと思います。
(私はここを見てスーパーホテルをよく使うようになりました。)
葬儀業界もそんなふうになればいいのですが、
・購買層の年齢が高くまだネットを使いこなせる状況ではない
・公平な評価市場が無い、状態です。
楽天トラベル的なところはありますが、
ポジショントークしか言わないブローカーレベルのところがほとんどです。
仮に公表しても
参加企業数、公平性、透明性などの点で
評価機関として楽天トラベルのレベルに全く達していないので、
おそらく消費者に信用してもらえないでしょう。

結局ネット上では葬儀社に対して
ステルスマーケティングや誹謗中傷がほとんどっていう状況です。

お金

 というわけで
いままでずっとそんな状況であったのですが
消費者が選択判断の時間軸を前倒しすることにより
(っていうと難しいけど、要は事前相談やセミナーに行くようになったってことね)
時間と情報の問題を軽減するようになりました。 
消費者が知恵をつける、っていう極めてまっとうな手段で
徐々にこの情報の非対称性の問題は改善されつつあります。

情報の非対称性の解消によって、葬儀価格は下落しました。
葬儀価格の下落っていうのは業界全体にはマイナスだけど
葬儀屋さんはちょっとこの点ばかりにこだわりすぎだと思うのです。
良い葬儀社にとっては逆選抜が少しだけ解消された状態、
つまり自社の優位性が顧客に伝わるようになったって事だから
必ずしもマイナスばかりじゃないですよね。
まだ不完全だけど、良い葬儀屋さんにはありがたいことなのです。 
悪い葬儀社の市場からの退場、を促進してくれるしね。











8 件のコメント

  • ネットベンチャーの社長さんが、今だに棺の原価と売価について、その差額を批判的に述べています。

    “この業界にきたての時から言っていたこと”を今だに述べているのは、経営者としての成長が伺えず残念ですね。(当初から面識があったもので…)

    身近な所で缶コーヒーや車などの原価を考えたことがないのでしょうね。棺の差額なんぞ説明しきれていない納棺の人件費を含めずに計算しても、まだ適正なほうなのですが…。

    葬儀の原価とか、ビジネス的にナンセンスですね。。。

    広告でも中身を端折ってわかりやすさを演出するより、きちんとした情報を提供して、お客様に深い理解と最適な選択肢が届けられる方向になるといいなぁ。

  • 業界人様、
    > 経営者としての成長が伺えず残念ですね。
    もしかするともう気付いているけど、
    悪者作っておくと楽だから、っていう発想かもしれません。

  • まさしく!古典派経済学に当てはめるとその通り!
    ただ、棺や祭壇に関してはギッフェン財、しっぺ返し理論に関しては相撲と野球の八百長のインセンティブが働くかと思います。

  • 元教師様、
    >ギッフェン財
    ギッフェン財・・・
    ああ、あれですよね、あれ。
    え、ええ知ってますとも。
    そうそう、ギッフェン財ですよ、うん(T_T)

  • あくまでも仮のお話ですが…原価五千円の棺を五万円、七千円の棺を十万円で販売してるとします。
    価格構成は最高五十万円として、それぞれラインナップがあります。
    さて、この価格構成に疑問を感じる経営者が、原価五千円の棺を一万と設定し、それぞれの価格を改定したとしても一万円の棺に需要が集まるでしょうか?
    おそらく人気は集まらず、その価格以上の棺が売れると思います。
    簡単に言うと、価格が下がっても需要が増えないのがギッフェン財ですね。
    安ければ良いというのは小さなお葬式にお任せします。
    何度か施行しましたが、あれは…

  • 経済や経営は専門ではないのですが、よく使う話を

    ラーメン屋に行くと最初に水が出てきます。
    そして700円のラーメンを注文して、会計で700円を支払います。(水代金の請求はない)
    ほとんどの日本人は「水は無料のサービス」と感じているはずですが、水やコップ、洗浄等のコストは700円のラーメン代金に含まれています。
    客の観察をしてみると男性客で1~2杯、女性客で1杯が平均(二郎系は別)と思います。

    ここで、700円のラーメンを650円に値下げをする代わりに、「水1杯で20円の料金設定」を行なったとすると、男性客で670~690円、女性客では670円となり、客にとっては有利な条件となります。
    しかし、「水で金をとるのか」や「他の店では無料なのに」等の批判やネット書き込みが出ます。
    女性客の賛同は得られますが、「飲食店の水は無料」と盲信している人達には受け入れられません。

    会館(施設)使用料無料、祭壇使用料無料、搬送料無料は「ラーメン屋の水」と一緒です。
    消費者は、ネットとグロスを充分に理解しておらず、企業側も「無料とのエサ」を使い過ぎています。

    夜中なのに、花火(東京大爆発は販売禁止)がうるさくて(正月終わりの花火)

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