賤(いや)しさと火葬場職員と心付け




先日雑誌「週間金曜日」ルポタージュ大賞 佳作に入選したルポを題材に
火葬場職員と心付けについて考えてみます。

本日述べることは以下の最低限のリテラシーを踏まえていることを事前にお断りしておきます。
・デリケートな問題であるという認識が必要なこと、
・週間金曜日という雑誌のスタンスとして国家権力「悪」 被差別者「善」という立場を取る場合があること、
・たとえ客観的事実を述べていてもその客観的事実の選択の際に書き手の主観が働いていること、
(↑これ確か本多勝一氏が言っていたような)

心付け
さて本題です。
「おくりびと」の先に――ある火葬労働者の死が問うもの
http://megalodon.jp/2011-0205-1907-55/www.kinyobi.co.jp/news/?p=1311

ルポの内容を要約すると

・大阪市の火葬場職員には心付けを要求する習慣が根強く残っていた。

・度々行政が指導を行ってきたが
火葬場職員が心付けを受け取ることをやめないため、
警察を介入させて調査を始めた。

・その過程である火葬場職員が火葬場内で首つり自殺をした。

そして終盤、ルポはこう述べます

「苛酷な労働で有るにも関わらず報われ癒されることのない現実を、
少しの金を受け取ることによって癒さざるを得なかった労働者の気持ちは如何ばかりであっただろうか。」

で、私の感想を一言で言うと
「甘やかすな!」
です。

取り調べの方法論に関しては検証と議論が必要ですが
火葬場職員への心付けを根絶しようとした行政の基本姿勢は間違っていないと思います。

自殺した火葬場職員や遺族の方に対しては、本当に気の毒だし
ルポ内でも火葬場職員の自殺の理由がはっきり述べられていると私には思えなかったので
亡くなった方をとやかく言うつもりはありません。

ただ一般論として自殺という手段は自分の主張にこめた本気度の強さを
周囲に思い知らせることはできると思いますが
自殺したからその人の主張が正しくなる
と言うわけでもないと思います。
(誤解の無いように断っておきますが、
私が批判しているのは亡くなった方ではなく、
火葬場職員の職場全体の体質に対してです)

世間からの差別の「強度」は私を含めた葬儀屋も、火葬場職員も
ほとんど変わらないと思います。

一方行政側に雇われている立場の火葬場職員は
言い方は悪いかもしれませんが
(原則消費者は火葬場を選べないので)独占的立場で
必要な収入も労働環境もちゃんと保証されているはずです。
葬儀屋のように他社との自由競争にさらされながら
一ヶ月に6日夜勤やって300時間以上働いて、体こわしたら事実上失業
という労働環境ではないはずです。

さらに100歩譲ってたとえ火葬場職員が過酷な労働環境だったとしても
心付けはもらうべきではない
というのが私の意見です。
(参照ページ:正しい心付けの断り方

私は以前公営の斎場の問題点を以前指摘したことがあります。
(参照ページ:公営式場・火葬場の問題点はどこか?

PFIを導入している火葬場と比べると概ね行政側の火葬場職員はサービス意識が低いと感じます。
(PFIが導入される前のK斎場では、遺族が帰りのバスの中で、
火葬場職員の態度の悪さを批判するケースが良くありました)

彼ら火葬場職員はこれまで自分たちの仕事の質を上げる努力はしてきたのでしょうか。
すくなくとも自分の仕事に胸を張れない人は他人から尊敬されないのではないでしょうか。

火葬場職員は遺族にとって非常に大切なお骨を扱う立場なのですから
火葬場職員が仕事内容で評価を受け、
世間の偏見を徐々に変えていくことは十分可能

だと思います。
(対応が素晴らしい火葬場職員はたくさん存じ上げています。)

ルポの中に出てくる
「金を受け取るなと言うが、当局はこれまで何をしてくれたのか?」
などという考え方は明らかに常識が麻痺していませんか。

さげずまれる仕事だから心付けでも要求しないとやってられねぇよ
という考え方をする人がもしいたとしたら
その人は世間からさげずまれても仕方が無いと私は思います。

たしかに職業だけを理由に蔑視する人々を完全に無くすことは
できないでしょう。
しかし減らすことはできるはずです。

重いテーマであることは確かです。
青臭いと言われてしまうかもしれません。
しかし今後は心付けの正当化などに逃げたりせず
火葬場職員が奮起し、自己改革を行うことを期待します。

後日談を追記しました

先日の産経新聞のニュースから

 

まだ判例データベースに情報がアップされていないので、
詳しい内容は報道から推測するほかないのですが
葬儀業者から「心付け」の名目で計約700万円を受領
という記述を見ると、葬儀屋自身が自腹を切るわけもないので
遺族に心付けを要求していた可能性が高いです。

 

また度々、行政側の指導があったにもかかわらず
従わずに心付けを受け取り続けていたようです。

 

免職処分が取り消しになったとして彼らは
火葬場職員として復帰するのでしょうか?

 

同じ葬儀業界の人間として敢えて申し上げます。

 

もし復帰することになったなら
葬儀業界の負の遺産を返済しようと日々がんばっている

(特に若い)葬儀屋さんに対して対等に口がきけるなどと思わないで欲しいのです。

以前書き記しましたが、もう一度言います。

さげずまれる仕事だから心付けでも要求しないとやってられねぇよ
という考え方をする人がもしいたとしたら
その人は世間からさげずまれても仕方が無いのです。











14 件のコメント

  • これ記者が書いたんじゃないんですね。最後まで読まないとわかりませんでした。どうも自殺した職員と個人的にも交流があった役人みたいですから、言論の偏り自体はまあしかたがないかもしれませんね。共感はしませんが。

    公務員を「甘やかすな」というのはよくわかります。またそれはそれとして、この問題が起こった時我々の周りでは「こんなもん、いまだに隠れて渡す葬儀屋の方が悪いわ」という意見で概ね一致していました。その意味では自殺した職員も一種の被害者と言えなくはありませんが…

    まあともかく、職員自身が自分たちの職業を賤しいと思っているんだとして、そこを思い直さない限り自分たちで差別を助長することになると本当に理解していないのであれば問題ですね。私なんかむしろ火葬場に勤めたいぐらいですけどねぇ(汗

  • 役所が違いますが都職では金を貰うと、軽くて戒告もしくは訓告、注意、普通は減給または停職、複数ならば諭旨免職、金を要求すれば懲戒免職。
    大阪市の懲罰軽すぎ。

  • お疲れ様ですm(__)m

    最近『葬儀社Mナビ』で探しています。今回火葬場職員の話で、ふと疑問に感じたのですが、仏教式以外、例えばイスラム教やキリスト教なんかの場合、火葬場とか火葬する時、手順ややり方って違うんですかね?

  • はるさん、
    > 私なんかむしろ火葬場に勤めたいぐらいですけどねぇ(汗
    私の周りの葬儀屋さんにも、そうおっしゃる方が多いです。
    (^_^;)

  • たけさん、
    > 手順ややり方って違うんですかね?
    そうですね、各宗教によって違いがありますね。
    イスラム教は経験ないのでわからないのですけど(^_^;)

  • 物理教師さん

    ありがとうございます。やはりそうなんですね~はるさんの所で書いてありましたが、『葬儀屋さんが火葬場に勤めたい』ってのもいまいちピンときません。
    火葬場の仕事のイメージはおくりびとの最後のイメージしかないですが・・・

    例えば、給料が破格にいいとか仕事が楽とかのメリットがあるんでしょうか?
    精神的にキツイイメージしか浮かばないのですが~?

  • たけさん、
    > 精神的にキツイイメージしか浮かばないのですが~?
    それは葬儀屋も同じだと思いますし、仕事はずっと楽そうですし。
    楽がいいのかどうかは考えが分かれると思いますが。

  • そうですね~。例えば私の場合は火葬業務「が」したいんじゃなくて火葬業務「も」してみたいんです。そこでも何か新しいことが見えてくるかもしれませんから。
    まあ、どうせ同じ葬送に携わるなら競争の少ないところのほうがいいなぁ…という思いも多少はありますけどね(汗

  • 物理教師さん、はるさん、葬儀業務に携わる皆さん

    ありがとうございます。
    先日冨安徳久さんの本を読み返して、ある場面で葬儀屋と知人に打ち明けたら忌み嫌われて冨安さんが『じゃあ、お前は死なないのか?』みたいな反論に妙に納得してしまいました。

    僕自身も学び始めるまで考えた事なかったのですが古代からある大切な職業(仕事)ですよね。

    別に悪い団体とか、非合法とか暴力団みたいな組織じゃなくて決して目立たないけどちゃんとした職業なんですよね。

    普通業界には○○協会とかあるじゃないですか?葬儀業界にもあるんですか?あるなら何故昔から社会に認知されようと協会サイドが努力されなかったんでしょうか?

    火葬場の方の話や冨安さんの話、きっと現場の人は、日々見知らぬ方々の為に奔走してるのに・・・
    社会悪の如く卑下する必要もないんじゃないか?って思います。皆さんもそうい理不尽な事を現場で言われるのでしょうか?

    やはりどの世界もそうなんでしょうが~現場の大変さを上は知らないんですかね?ただ、個人的には葬儀業務に携わる現場の方々が社会からどの職業よりも報われて敬意を払うべき職業である!なんて思います。

    だって哀しみの中、身内や知人友人の為だけじゃなく見知らぬ人の為に弔いの準備施行を行っているから!

    すみません、些細な疑問から久々長文になってしまいましたm(__)m

  • たけ様 皆さま

    《冨安徳久さんの本を読み返して、ある場面で葬儀屋と知人に打ち明けたら忌み嫌われて冨安さんが『じゃあ、お前は死なないのか?』みたいな反論に妙に納得してしまいました。》

    それから
    冨安さんが異業種交流会で「葬儀屋はないだろう」って名刺を破られたっていう話も印象的でした。

    《葬儀業務に携わる現場の方々が社会からどの職業よりも報われて敬意を払うべき職業である!なんて思います。》

    本当にその通りだと私も思います。

    だから葬儀業界にいるわけではない私も
    こうして
    登場させて頂いておりますm(__)m

  • つれづれ思うさん

    初めまして、たけです。
    なんか共感してもらえて嬉しいです。ありがとうございます。

    個人的にはう~ん、お坊さん、や日本中の宗教団体が謙虚さを忘れ法外な利益や国家権力と癒着しまくってるからかな?と思っています。

    それに葬儀屋さん、墓石屋とか献花屋さん、火葬場屋さん等々、付随する事業団体も一緒に巻き込まれてる感じがします。

    ただ昨今、風向きが変わってきてますし、もっと社会の表舞台に出てきて門戸開放するべきかな~?って思います。

    冨安さん達現場の人が受けた屈辱が報われる日が来るって思いたい・・・

    そうすれば
    このブログのような火葬場職員の悲劇だって無くなるかもしれません。

    誰もが目を背きたくなる世界に正面向いて仕事に従事する葬儀屋さんには胸張って活躍してもらいたいです。

  • 心付けについてですけど、お寺様どうなるのですか?
    火葬場と同じ様にいただいてたとおもいますけど

  • 個人の思い 様
    お寺の心付けというのはピンと来ないのですが
    御布施とは違うんですよね?

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