大前研一氏の葬儀業界の分析が非常にいい加減な件




大前研一氏は大変優秀なコンサルタントであると思います。
私もレポートを書くとき、
ロジックツリーやMICEなどのフレームワークを、見よう見まねで使いますが
それを生み出したマッキンゼーの、日本支社の社長だったということだけで、
尊敬に値します。

原発事故が起こったときも、
彼の解説が一番的を射ていたように思います。
(彼は日本製原発を作ろうとしてMITで博士号を取得したそうな)

そんなわけで、基本的に彼にたいして私は好意的なのですが・・・

なぜか葬儀に関して口を開くと、「?」なことをおっしゃるのです。

たとえば日垣隆氏がパーソナリティをつとめていたラジオ番組
「サイエンスサイトーク」にて

「複数の葬儀屋から見積もりをとれば、
葬儀費用は三分の一になりますよ」

複数の葬儀屋から見積もりを取るのは大賛成ですが
いくらなんでも三分の一は言い過ぎでしょ。
規模やランクを極端に下げない限りは
(というか一般葬を直葬に切り替えるくらいのことをしないと)
不可能です。

そしてこの本。

彼の主催するBBT(ビジネスブレイクスルー大学)というネット上での講義を書籍化したものです。

そのなかであのイオンの葬儀業界参入について述べています。

まず一部を引用します

「それから、生前のリタイヤメントライフから7回忌位までをズーッとやっていって、イオンは少しカバーする範囲を前後にもってくると
ものすごい広い事業になるし、それから、1周忌、2周忌と
7回忌までやると7回パーティやるじゃないですか。
そういうことでそれを全部仕切るとものすごいカネが出てきます。」

2周忌って何?
4回忌、5回忌があると思っている人間が、
葬儀業界の展望を語りはじめます(^_^;)
(これって別に、重箱の隅系のツッコミじゃないですよね。
超基本的な知識が抜けているせいでビジネスチャンスを読み違えています。
それからもしかすると大前氏は四十九日法要のことは御存じないのでは)

さて次はこの発言。

「それで今度は、寺院の方には、お布施、戒名、その他の料金払いますが、
葬儀社の方からの紹介ということあるんで普通はですね、
寺院は弱い立場で葬儀社の方から呼んでもらうんですね。
そうすると3割から7割のキックバックが葬儀社側にきて、お寺と言うのは、
逆に葬儀社にむしり取られてると、とういう感じなんですね。」

ちなみに講義の中で扱われている人口問題の図表に関しては
人口問題研究所のデータがソース(情報源)になっていますよね。

寺院から葬儀屋が3割から7割のキックバックをもらっているという
この話のソースは?

資料にはBBT総研作成としか書かれていないけど、
まさか週刊誌のゴシップ記事を引用したわけではないですよね。
もう一度聞きます。
ソースは?

ちなみには私の勤める葬儀社は、
寺院からのキックバックは一切やっていません。
確かに業界内には、日常的にやっている悪い葬儀社も一部にはいるでしょう。
しかしフツ-に葬儀屋がそんなことやっているように言われてもねぇ。
(そもそも「3割~7割」ってアバウトすぎでしょ。
この商品の予想利益率は3割~7割です、
なんて説明するコンサルなんていないよね)

全葬蓮(葬儀屋の団体)は抗議してもいいくらいのレベル。

次にこれ。
「葬儀社、寺院、オークションを取り行います。
そして、イオンの方は、サービスレベルアグリーメント、
これこれしかじかやりますと
このような大きさの写真と大きさの花束をやり、それで、落札をしてその人にあげると。
特約店方式は取らない、誰でも入札してくださいということですね。
もしかしたらモバオクか、何かでやってもいいくらいのものですけども。
それでイオンは、価格決定には関与しない、従って品質保証のみを行う。
仏教界との車撤を避ける、こういうことですね。」

オークションは買い手がある程度目利きができるから、
成立しています。
逆に言うと、オークションは買い手が目利きでないと
(つまり商品のバリューを判断できないと)、
値付けができず、オークションは成り立ちません。

例えば自分が盆栽のオークションに参加するところを想像してみてください。

日本有数の価格比較サイト内に葬儀社を扱うカテゴリーがあります。
ここに参加している葬儀社のうち3社に知人が在籍しています。
彼らは口を揃えて、あまりうまくいっていない、と言います。

なぜならそのサイトでは
買い手は価格でしか葬儀社を判断しない(できない)
からです。

扱う商品が同じ機種のPCなら話は簡単です。
アフターサービスなどの要素はあるものの
基本的に一番安いのを買えばよいのです。

しかしソフトとハードが、葬儀社によってかなり異なる葬儀という商品を
金額だけを提示して選ぶことは
安けりゃ何でもいいという人を除いて、
本来不可能です。
家賃だけを見て住むところを決めるようなもんです。

同じ事が大前研一氏の提案する葬儀屋のオークションでも起こるでしょう。

目利きができないからちゃんとした値付けができない。
そうなると葬儀屋のバリューに関係なく、
ただひたすら金額だけを見て安く安くというのがオチです。

そこは「イオンが選んだ葬儀社なのでサービスレベルアグリーメントが担保されているから大丈夫」
とお考えなのかもしれません。

しかし実際にイオンが葬儀社を選定した過程を知っている葬儀屋さんが聞いたら
失笑するでしょう。
いまさら公開できないけど品質基準がありますと言われても・・・
(このあたりのことに関しても
本来なら葬儀屋にフィールドインタビューを行うべきだと思います)

イオンに手数料支払って、
さらにネットオークションで目利きのできない買い手に値付けされてもよいという葬儀社がいるとしたら、
その葬儀社は
底値まで値段をさげないとやっていけないか、
イオンというブランドがないと買い手の付かないレベルか、
どちらかでしょう。
(あくまでネットオークションの仮定の話です。
現在イオンに加盟している葬儀社がそうだ、と言っているのではありません)

大前氏はなぜ読み違えているのでしょうか?

大前氏は葬儀社の取り扱うハードばかりを見ています。
彼は葬祭業がサービス業であるとは思っていないので、
こういう発想になってしまうのだと思います。

それどころか大前氏は
葬儀社にクオリティの違いなんぞ無い
と思っているのかもしれません。
確かにそれなら
「もしかしたらモバオクか、何かでやってもいいくらいのもの」
という発言も納得できます。

さて前述したように大前研一氏は優秀なコンサルタントです。

しかし企業参謀でQBハウスのビジネスモデルを預言していたような鋭さは
この講義には全くないです。

今回の大前氏の話の内容は
波頭氏と冨山氏が批判している現場を見れない若手コンサルタント以下の出来だと思います。

いくらなんでも彼の仕事が、
こんなレベルの訳がない。

なぜこんなことに?

それは大前研一氏が
葬儀業界をなめているから
です。

葬儀業界は低学歴で卑しいチンピラが、
消費者をだまして大もうけしているゆるい業界である
というバイアスを持っていることが、
彼の言葉の端々にうかがえます。

だからごくごく基本的なリサーチすらせずに
適当なことしゃべっても通用すると思っているのでしょう。

これが金融業界相手ならちゃんとリサーチして
それなりのことをしゃべると思います。
(実際他の著書ではそうしています)

まぁこれは彼個人がダメっていうレベルの話ではないのかもしれませんね。
産業分析に長けたコンサルのトップグループにいる彼ですらこのありさまなら、
そりゃ、世間は、葬儀屋嫌うさ。
(参考ページ:なぜ葬儀屋は嫌われるのか

というわけで、私から一言。

葬儀業界なめんな!

いや残念ながらなめられてもしょうがないところは多分にあるな。

じゃ
なめ過ぎんな!(^_^;)

本当は優秀なコンサルタントが葬儀業界に入ってきて
改革を起こして欲しいのですが
難しいのかなぁ。











7 件のコメント

  • 改革を起こすために外からコンサルを呼ばなきゃいけないというのもナサケナイ話です。業界人たちが自身のレベルを底上げして、内部から改革されることを期待したいんですけどねぇ…
    いやむしろ、イオンも含め現在では外部から入ってきたビジネス屋とマスコミや自称識者が業界をより「悪者に」しているわけでしょう。振り回される消費者が結局一番に割を食っているのが痛ましいところです。

  • はる さん、
    >内部から改革されることを期待したいんですけどねぇ…
    そうなんですよね(^_^;)

    近年は「企画立案型」のコンサルタントではもうだめで、
    現場の実行力から逆算して、プランを実現化するところまでの能力がないと、
    コンサルタントは評価されないそうです。
    その観点から言うと葬儀現場のハードルは高いですよね。

  • 時々遡って読ませていただいては、勉強させていただいてます。

    「2周忌って何?」
    思わず吹いてしまいました。
    重箱の隅系のツッコミじゃないと思います。
    確か大前さんはクリスチャンだと聞いた気がするのですが、
    いい歳してる割に世間を知らぬ私ごときでも、それくらいは知ってます。
    大前さんを尊敬していただけに、がっかりしました。

    「改革を起こすために外からコンサルを呼ばなきゃいけないというのもナサケナイ話です。」
    私の職場も同じです。
    本当は、世の中の先頭に立って道を切り開くべき立場なのに、今では世の中から置いてけ堀の状態です。かっこ悪。
    いい歳してる私たちが変えていかなくちゃいけないんだと自覚はしているのですが。

  • Narcissuss様、いつもコメントありがとうございます。
    大前さん、すごく優秀なんですけどねぇ。
    残念です(>_<) それからこの業界も、この記事書いた頃よりは ちょっとましになったような気が・・・

  • こんにちは、とても良い記事でした。私も大前研一の本をよく読んでいます。現場の方の意見も合わせて知るとさらに勉強になり良かったです。ちなみに、大前先生の葬送業界への考えを詳しく知るためには「もし私が社長なら」シリーズの「あなたが燦ホールディングス の社長ならばどうするか?」http://nextpublishing.jp/book/7979.html。を読まれると良いと思います。ご参考までに。

  • リンクの紹介ありがとうございます。早速拝見させていただきました。詳細な分析がされていていいですね。大前さんもこういった反論は大歓迎だと思います。議論をしながらアイデアを高めていくことを大切にされている方ですからね。また、葬送業界については早急な改革が必要であると私も感じております。実は、つい先日、父が他界しました。大手の葬儀社で通夜、葬儀、火葬と行ったのですが、トータルで200万円ほどかかりました。それで、お値段や内容に満足しているかと言われれば、全くしていません。特殊な業界であることは理解しておりますが、それでも顧客満足度を高めるために様々な改革が必要なのではないかと身を持って感じました。

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