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プレジデント「介護・葬式・墓 賢い選択50」の問題記事




さて先日プレジデント社からこんな本が発売されました。
介護・葬式・墓 賢い選択50 プレジデント2011年 1/2号別冊

過去に出版された
「プレジデント」2010年1月4日号特集「『病院、介護、葬式、墓』大百科」、
「プレジデント・フィフティ・プラス」2008年7月16日号「介護、葬式、墓 全課題50」
を編集したものなので、
既にお持ちの方は購入されなくて良いと思います。

お葬式に関する内容についてはたいしたことがないので、
まだお持ちでない方も購入されなくて良いと思います。(^^;)

それが一番「賢い選択」だと思います。

ちなみに
葬儀業界におけるマスコミ報道とメディアリテラシー 2
で指摘した「異常な記事」はさすがに掲載されていないようです。

プレジデント社がよく使う、上記の記事を書いた某葬儀ライターさんは、
提供する情報が一面的で、発生しうるリスクに対しての説明責任を十分に果たしていないように思います。
その点は上記の記事を含め過去何度か指摘してきました。
(参照ページ:葬儀業界におけるマスコミ報道とメディアリテラシー 3)

某葬儀業界雑誌でもチクリとやられていましたので、
そう思っている方は多いのでしょう。

今回の書籍に収録されている記事の中で
特に実害を及ぼしそうな部分について指摘しておきます。

50・51ページの内容についてです。
(お持ちの方はページを広げてみてください)
記事と図表から内容を要約するとこんな感じです。
「死亡届けを提出した時点で銀行へ死亡情報が流されると言われている。
そうすると故人の銀行の口座が凍結されて引き出せなくなる。
だから亡くなったら急いで故人の口座からお金を引き出そう」

さてまずは「銀行へ死亡情報が」のところです。
「言われている」って何だよ。
もの書きだったらちゃんと裏を取りなよ。

私の経験、そして銀行と役所への問い合わせから判断して
死亡情報が流されているという事実は確認できませんでした。
絶対に存在しないことを証明するのは論理上不可能ですが(悪魔の証明と言われるものです)
公的機関が入手した個人情報を民間企業である銀行に勝手に流出させる
というのはちょっと考えられません。
遺族から銀行に伝えない限り、銀行にはわからないということです。

もしかすると
地元の名士の死亡情報が銀行員の耳に入ったとか
地方で習慣的に新聞に掲載される事例とか
お金を引き出そうして亡くなったことをつい銀行員に言ってしまったとか
そのようなケースが「都市伝説」になったのではないでしょうか。

次に
「故人の口座からお金を引き出そう」のところです。

本来は
遺族が銀行に亡くなったことを伝える
→故人の口座が凍結される
→除籍謄本・相続人全員の印鑑証明・遺産分割協議書を提出する
以上の流れを経て始めてお金を引き出せるのです。

銀行が、亡くなったことを知った段階でその人の口座を凍結するのは、
民法882条民法896条に関連して
相続のトラブルを回避するためです。
例えば次男に内緒で長男が亡くなった父親の口座から勝手にお金を引き出したらどうなるか、
を想像すれば分かるでしょう。
または、もし後で故人に隠し子がいたことが発覚し相続権を主張したら?
または故人の遺言が出てきたら?

そういうリスクを一切書かないで
亡くなったらすぐに故人の口座からお金を引き出すことを勧めてどうするのでしょうか?
これって「横領の教唆(きょうさ)」に当たると思うんですが・・・
脳天気というか危なっかしいというか・・・

本来、遺族に伝えるべき情報というのはこういう内容(行政書士さんのHPより
)ではないでしょうか。
私も複数のメガバンクに確認をとりましたが、
口座凍結後所定の手続きを取れば、ひとまず葬儀費用分はすぐに引き出せる
とのことです。
黙って、勝手に、あわてて引き出す必要は(悪意がない限り)どこにもありません。

最近「お金を引き出す時間が欲しいので、役所への死亡届けの提出を火葬ぎりぎりまで見合わせたい」とおっしゃる御遺族が増えました。
その際私は正しい情報と生じるリスクに関してちゃんと説明していますが
このライターの軽率な記事は、
・金融機関の所定の手続きに背くことを勧めている
・親族間にあらぬ争いを生む
・遺族と葬儀屋さんのスケジュールに余計な負担をかける
という非常に迷惑な状況を生み出しかねません。

プレジデントさんも読者のことを思うなら
ライターの人選に「賢い選択」が必要だと思います。


追記
このライターに関する一連の記事は
・一般読者に実害を及ぼさないようにする
・このライターに反省と改善を促す
ことを目的としています。
彼女の実名(雑誌には掲載されています)ともう一つの肩書きを、私のブログ中では使用していません。その理由は、彼女に関するワードの検索結果の上位にこのブログが上がってしまう可能性があり、必要以上に彼女を刺激しては反省と改善が見込めないと考えているからです。
この配慮を彼女が理解してくれれば良いのですが・・・(^^;)

それからこのライターが私の記事に意見があるようなら、コメント欄もメールアドレスもオープンにしているので、どんどん意見を寄せていただければ、と思います。私の記事に誤りがあれば、当然訂正・削除をおこないます。











7 件のコメント

  • いつもお疲れさまです。一般のかたには「よくある」誤解ですが、メディアがしていい間違いじゃないですね(汗
    業界内にも自分のところの支払を早くさせたいがために同じように教唆する人がいますね。困ったことです。

  • 今までの経験と立場的にいいますと、行政から銀行や保険会社等に情報が流れることは「あり得ません」。
    確かに、数年に1度は公務員が民間企業や民間人に対して「情報をリークした」として懲戒免職や諭旨免職、減給や戒告等になることはありますが、「正当な理由なく個人情報を伝える事」は個人情報保護法、国家公務員・地方公務員法、または資格法により禁止されています。
    正当な理由とは「裁判所からの令状に基ずく場合と、緊急回避」であり、通常ではあり得ません。

    確かに、北海道や沖縄県等の一般人でも「死亡広告」を載せる地区では、紙面で銀行が預金者の死亡を知ることは可能ですが、親族(相続人)からの申し出がないのに、銀行独自の判断で口座締結をする事は、基本的にはありません。
    また、相続問題でトラブルになるために、死亡者の口座には「手をつけない」のが常識であり、動産や不動産をすべて確認して書面を残さなければ、問題が発生します。(公正証書等があれば別)
    父の死亡時も都市銀には、「聞いたら手続きが大変になるので、聞かなかったことにします」と言われました。(都市銀も意外と柔軟です)

  • はるさん、
    > 業界内にも自分のところの支払を早くさせたいがために同じように教唆する人がいますね。
    あー、なるほど。確かに言われてみればそういう考え方もありますね。

  • prof 様、
    補強のコメントありがとうございます。
    prof 様に書き込んでいただけると本文の説得力も増しますね(^_^)
    ありがとうございます。

  • 物理教師さん

    御無沙汰してます、たけですm(__)m『神は存在するか?』に近いテーマになりますが、苫米地英人氏著書の『生と死の取り扱い説明書』を以前読んだのを思い出しました。

    読まれた事はありますか?

    なんて説明していいか理解しかねますが脳機能学者からの視点での死に付いての解釈といいますか?宗教を否定的にみています。それ以外も多々見解があるのですが・・・

    すみませんうまく説明出来ないですが、死の間近に接して他人のお別れの儀式に立ち合う物理教師さん達には、これはどう映るんだろう?って思いから聞いてみました。

  • 物理教師さんへ

    『怪しい』ですか?(笑)
    オウム信者から洗脳を解いて脱会させ有名になった方です。脳機能学者の側面から当該書籍では宗教を否定して故人にとって死は妄想であると確か書いてました。
    個人的にはこれだけ長い人類の歴史で世界中に『宗教』が継続されてるのに真っ向から否定されてるのが僕には新鮮に映りまして。

    今まだ葬儀本読んでますが次回は無神論の本にいってみようかと思ってます。

    葬儀のパターンて本当に多々あるんですね、坊さん呼んで読経しなかったり、セレモニー形式だったり、ただ海に散骨だったり・・・

    大切なのは故人を偲ぶ気持ちなんだと、富安さんの本から数えて6冊(スピリチュアル系や神道系?がうち2冊)読んで実感しました。葬儀社や宗教は、遺族と故人の繋ぎ役なんですね。

    宗教って媒体(?)通さなくても故人と遺族の意向が大切なんですね。

    勉強になりました、ありがとうございます。

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