(PR)

自殺の動機トップが圧倒的に「健康問題」である本当の理由




人気ブロガーであるChikirin(ちきりん) さんの書籍
「自分のアタマで考えよう」
を読んで思ったことです。

この本の第8章 は
データはトコトン追い詰めよう――自殺の動機トップが「健康問題」ってホント?
というテーマです。

どういうわけかこの章だけ
「答えは宿題」ということで
結論が述べられていません。

ちきりんさんのブログの過去の記事を見てみると
何度か自殺について触れています。

たとえばこの記事
「日本の自殺の原因を見ると、女性の自殺原因は大半が自分の病気です
一方、経済的な理由での自殺は圧倒的に男性が多い。」

というように。

一通り読んでみると
ある視点に関して言及されていない様なので
私のブログで述べてみることにしました。

ある視点とは
自殺の動機トップを「健康問題」とする統計データは結構精度が低い
ということです。

ではなぜ精度が低いのか、というと
「自殺の原因が、健康問題「以外」の場合、
警察のヒヤリングに対して遺族は本当のことを言わない」

からです。

自殺の現場では警察による検視が行われます。
死因が検案によって自殺であると断定され、遺書がみつからない場合は
警察が遺族に対して自殺の動機をヒヤリングします。
(これら一連の調査が警察庁発表のデータに反映されるわけです)

その際、もし家族間の問題や経済問題という、
「遺族にも何らかの原因(もしくは責任)の一端があるケース」の場合
心当たりがあっても遺族は、正直に答えるでしょうか?

もっとも無難かつ遺族が責任を負わない「健康問題」と答えるのではないでしょうか。

警察は忙しいですから自殺という死因さえはっきりしてしまえば、
その動機まで深く調べようとしないでしょう。

そういうわけで統計上は
実態以上に自殺の動機が「健康問題」
ということになっている
のだと思います。

実際私は経済問題の方が、原因として大きいのではないかと考えます。
自殺者数が日経平均と負の相関性を持つことはよく知られています。
つまり、景気が良くなる→日経平均が上がって失業者が減る→自殺者が減るという構造です。
ちなみに、男性にとって失業は死よりもストレス度が高いというデータもあります。(参考記事:誰か止めてあげて! | 考える葬儀屋さんのブログ

(もちろんこれは推測なので健康問題が動機のトップである可能性はあります。ただ健康問題のカウント数が上振れしている可能性は高いということです。
また上記の遺族の対応を非難しているわけではないことをお断りしておきます。)

さて上記の視点は
実は私が「自分の頭で考えた」ことではなく
10年前に上野正彦氏が著作「自殺死体の叫び」で述べていらっしゃることです。
(40ページ・140ページ)

現場の方の意見なので、その通りなのでしょう。

私が自殺の統計に関して、仮説として疑っているのは以下の内容です。

カソリック文化圏では自殺率が全体的に低い傾向にあります。
参照ページ

これはカソリック文化圏では自殺を禁じているのが大きな理由だと考えられています。

しかしそれ以外の理由として

もしカソリックの自殺者がいたとする。
→自殺者の葬儀を教会が受け付けないケースも多い
残された遺族も対外的に大変困る
→検案書上は自殺とするが、警察は配慮して
表向き自殺のケースをただの変死扱いにしているのでは
→そのため実態以上に自殺者が少なく申告されているのでは・・・
という仮説なのですが・・・・

検証はしていませんが
(今後もする予定はありませんが(^^;))、
いかがでしょうか?

また
2010年に自殺者数が減少した理由は
おそらくこちらの記事に書かれていることが原因だと思います。











4 件のコメント

  • おはようございます

    現在、卒業論文の中の一部に司法・行政解剖をテーマに取り入れ執筆中ですが、確かに疑念疑惑が色濃浮かび上がってきます…

    エンバーミングをしていても、検案書の「鎰死」を信用しますが、疑わしい…逆も然り…

    日本の司法機関の限界が、目に見える形で、少しずつ葬祭の現場にも表れ始めたのかもしれません

  • 大きく誤解をされているのが死因と死亡分類。
    例えば、ビルの下で全身坐傷状態の遺体が発見され、法医学の専門家が検死して死因は全身坐めつと診断をつけれても、その原因は分かりません。
    誤って転落した事故死なのか、自ら飛び降りた自殺なのか、他者が関与した殺人なのかは遺体を診ても分かりません。(特別な徴があれば別)
    そのために、所轄署の捜査を基に死因分類を特定します。(死亡に至る原因や分類は司法が決める)
    これはAiを使用しても判別は不可能であり、器質的状態の判断には有効でも、状況的判断は出来ません。

    特に捜査により事件性が否定された場合は、「自殺」とすることが慣例であり、自殺原因不明では捜査上も問題が発生します。
    経済的に問題がない場合は、人間関係問題(職場、家庭、恋愛)もしくは健康問題が落とし所です。
    その中で、「健康問題」とすることが周囲の残された人達にとって最も害がないのではないでしょうか。
    真実は、刑事調書と検案調書に書いてあり、公表や統計用の分類などは事務方が作った画一的な判断であり、無茶な分類です。
    そもそも、遺書がある自殺は珍しく、特有の症状や状態がある人達に自殺が多いものです。
    これら公にできないのが「守秘義務規定等」であり、その落とし所が「健康問題」でもあります。

  • prof様、
    コメントいただけると思っておりました(^_^)
    > 真実は、刑事調書と検案調書に書いてあり、公表や統計用の分類などは事務方が作った画一的な判断であり、無茶な分類です。
    prof様がそうおっしゃっているということで、
    この自殺に関する統計に関する話はこれで結論が出たということですね。

  • コメントを残す