葬儀マナーの解説で、NHKに出演したこともある葬儀屋さんがお葬式の服装について解説するシリーズです。
今回は葬式に着ていくべきレディースのブラウスと、メンズのシャツについての解説です。
目次
おすすめするレディースのシャツ(ブラウス)の条件
女性の場合、シャツではなくてブラウスと呼ぶのが一般的でしょう。
現在女性の参列者の9割はアンサンブル(ジャケット+ワンピース)で、アンサンブルの場合ワンピースの上にジャケットを羽織るので、ブラウスは必要ありません。
以下は女性がパンツスーツ(ジャケット+パンツ)もしくはツーピース(ジャケット+スカート)を着用する際の、ブラウスの条件について述べます。
なぜレディースのブラウスは白ではなく黒なのか
現在、女性がお葬式にパンツスーツやツーピースで参列する場合、ブラウスは白ではなく黒です。
欧米でのフォーマルなスタイルは黒いドレスです。
↑この記事で書いたように、近年までパンツスーツという選択肢はありませんでした。
また日本では1970年ごろから和服→アンサンブル(ワンピース+ジャケット)への移行が進みました。
つまりお葬式に女性がブラウスを着ていくこと自体、以前は少なかったので、ブラウスの色に関する伝統的なドレスコード(装いの決まり)はそもそも存在しないというのが前提です。
そうであるなら、
男性が白いシャツなのだから、女性も白いブラウスで良さそうなものです。
それにもかかわらず、なぜ女性は黒いブラウスなのでしょうか?
これと言った定説が見つからなかったので
いくつか理由を考えてみました。
アンサンブルに合わした
アンサンブルは黒いワンピースに黒いジャケット姿、つまり全身黒です。
それに合わせて、ブラウスも黒にしたということが考えられます。
就活生に見える
私が就活生だった1990年代後半は、女性の就活生の服装は紺のツーピースのスーツが多かったと記憶しますが
2000年代に入ってから、みんな黒のスーツに白いシャツになってしまいました。
そのため大学生が一種の制服としてお葬式で着用するのは違和感ないのですが、大人の女性が着用すると就活生ぽく、つまり幼く見えてしまいます。
男性は黒ネクタイを着用するので、就活生に見えることはありませんが、女性はネクタイを締めないので、就活生と全く同じ格好です。
そうなると就活生ルックと差別化をはかるには黒いブラウスを着るのが手っ取り早いです。
言語化されていませんが意外とこのあたりが、女性のブラウスが黒である大きな理由なのではないでしょうか。
お通夜なら女性はスーツに白シャツでもいいのか?
男性の場合、お通夜はフォーマル度を落として紺やグレーのスーツでもいいのであれば、女性も白シャツでも許されるのでは?
という質問をお受けしました。
結論から申し上げると、女性はやはり黒いブラウスのほうが良いでしょう。
最近は男性でも99%がブラックスーツです。
この記事に書いた内容から引用します。
以前は、遺体の保全処置方法も限られており、火葬場も空いていたので、亡くなったその日に通夜ということもよくありました。
そのため会社に出勤して訃報(亡くなったという知らせ)を受取り、当日勤務終了後すぐ通夜に参列と言うことがあったので、勤務中と同じ紺やグレーのスーツでも許されたのです。
50年ほど前は「参列者が通夜に黒い喪服を着てくるのは、死ぬのを準備していた印象を与えるのでマナー違反」とまで言われたことがあったようです。しかし最近は、
- 遺体の処置方法も発達し、
- 火葬場も混雑しており、
- 海外にいる親戚の帰りも待たなければいけない、
というような要因で、亡くなってから2~3日後にお通夜というのが常態化しています。
その結果、「用意する時間があるんだから、ちゃんとブラックスーツ着てくるのがマナー」という状況に変わりつつあります。
ということで、女性もちゃんとフォーマルな格好ということで、黒いブラウスのほうが良いでしょう。
長袖が好ましい
お葬式の最中はジャケットを羽織るのが前提なので、半袖でも長袖でもかまいません。しかし何らかの機会にジャケットを脱ぐ場合もあるかもしれず、肌の露出は抑えるべきなので長袖にしておいた方が、無難です。
同じ理由で胸元が開きすぎていないデザインを選びましょう。
エリ無し(ノーカラー)が良い
お葬式用のブラウスは襟付きではなく、襟無し(ノーカラー)の方が良いでしょう。
というより、ブラックフォーマル用のブラウスを探してみると分かりますが、ほとんどがノーカラーのブラウスです。
これはおそらく、女性用のジャケットの襟(えり)の形が影響していると思われます。
男性のジャケットの基本形であるノッチドラペルであれば襟付きのブラウスが似合います。
しかしお葬式で着る女性のジャケットの場合、スタンドカラー・ノーカラー・ショールカラーのジャケットの方が主流であり、これには襟付きのブラウスは似合わないため
襟無しのブラウスが主流なのでしょう。
(↓ジャケットの襟の形についてはこの記事を参考にしてください。)
素材は光沢のないもの
お葬式の装いは華美にしないのが原則なので、光沢のない素材を選びましょう。
男性のシャツはコットン製がほとんどですが、女性のブラックフォーマル用ブラウスは化学繊維がほとんどです。
ブラックフォーマル用であれば光沢がおさえられていますが、単なる黒い化学繊維のブラウスの場合は注意が必要です。
このブラウスがおすすめ
ユニクロにぴったりのものはないのですが、強いて選ぶならこちら
レーヨンブラウス(長袖) (WOMEN) | ユニクロ
どのジャケットにも似合うブラックフォーマル用のブラウスをAmazonで購入する場合は、以下の3点がおすすめです。
お葬式用の黒いブラウスは、Amazonでもラインナップが少ないのですが、翌日届くAmazonプライム対象商品を選びました。
おすすめするメンズのシャツの条件
まず一般的なお葬式のドレスコード(服装の決まり)として男性のシャツの場合
色は白
お葬式の服装はモノトーンが基本なので、男性の場合白。
ワイシャツは「ホワイトシャツ」が語源であることから分かるように、白は男性のシャツの基本色です。
豆知識ですが、シャツは元々下着でした。シャツの下の部分を、相撲のまわしのようにつないで、ボタンで留めパンツの機能を持たせていたのです。
イタリアの高級シャツに胸ポケットが付いていないのは、下着だからです。
お葬式などのフォーマルな場所でジャケットを着るように言われるのは、下着姿になるな!という意味なのです。
襟はレギュラーカラー
襟(えり)は、あまり開きすぎていないおとなしめのデザインのレギュラーカラー(襟の開きの角度が90度くらい)がベスト。
しかしそれより開いているセミワイドでも問題ありません。
ただしボダンダウン(襟の先をボタンで留めるタイプ)はカジュアル過ぎなのでダメ。
タブカラー(襟同士をつなげるボタンでネクタイを持ち上げるタイプ)・ピンカラー(襟に金属のピンを通す)ものは華美と見なされてお葬式にはふさわしくありません。
素材はなめらかなもの
織りはオックスフォードのようなざらついたカジュアルなものではなく、ブロード・ツイル・ドビーのようになめらかで高級感のあるもの。
よくわからなけば、表面がツルツルだけどテカテカした光沢感がないもの、と理解しておけばOKです。
素材はコットンが一般的ですが、なければ化学繊維のものでもよいです。
サイズの合っているものを
ネックサイズと裄丈(ゆきたけ:首の付け根から袖までの長さ)が合っているものを選びましょう。
シャツはなかなか試着ができないことも多いです。
日頃自分のサイズを把握しておきましょう。
ネックサイズは実際にメジャーで測った首回りのサイズ(実寸)に+2㎝ 足したサイズが理想です。着たときに指が2本ほど入ると良いでしょう。
また高級なシャツは襟周りがぴったりでもきゅうくつではないのですが、安いものだともっと余裕が必要です。
私の持っている3万円程度のイタリアのシャツの場合、襟は曲線的な手縫いのため、ネックサイズは39㎝でOKなのですが
日常使いの3,000円程度の形状記憶シャツの場合、40㎝のものを選んでいます。
裄丈(首の付け根からソデまで)は自分で測るのは結構難しいので、お店の人に計ってもらうか、サイズの合うシャツを床に置いて計って下さい。
袖がボタンでぴったり留まるタイプのシャツなら、少々長めでもずり落ちてこないので、大丈夫です。
会社勤めの方の場合、日頃上記の条件に合うシャツを着ていることが多いのではないでしょうか。
お持ちならそれをお通夜・お葬式に着て行ってください。
お持ちでないなら以下の記事へ。
私の場合の追加条件
葬儀屋さんという葬儀現場のプロである私は、普段どんなシャツを選んでいるか、参考までにお話しします。
これまで述べた条件に加えて、下記の条件も必要になってきます。
ノーアイロン
通夜が終わって帰路につく頃にはクリーニング屋さんは閉っているので受け取れない。よって自宅洗いができるもの。さらにフラフラで帰ってきてからアイロンがけをするのは無理なので、ノーアイロンであることは必須です。
サイズが幅広い
個人的な体型の話ですが、私は首が細く手が長い体型なので、サイズバリエーションが幅広いものを。
安っぽく見えないけど安い
業務上設営作業などもあるため、袖がすぐに汚れてしまうので高いものはちょっと困ります。
とはいえ安っぽく見えるものはダメです。
ちなみにプレゼンなどでスーツスタイルの時は、ルイジボレッリとかターンブル&アッサーなどの3万円クラスのインポートものを着ています。
海外物だと私の特殊体型でもサイズOKなんですね。
でも肉体労働前提の葬儀現場では、とても高級なシャツは着る気にはなれません。
ユニクロ以外で買うなら
そこでいろいろ試してたどり着いたのがこれ。
形態安定記憶機能付きのシャツは化学繊維のものが多いのですが、これはコットン100%です。
サイズのバリエーションもかなり豊富で、おそらく日本一ではないでしょうか。
以前は近所の「青山」で買っていたのですが
紳士服量販店のものより、耐久性に優れていると思います。
こちらは化学繊維なので、素材感は落ちますが、できるだけ安いシャツをお求めの方にはおすすめです。
サイズバリエーションも多めです。
ただAmazonの場合、サイズによっては送料がかかるので、
3枚まとめて買ってもいいという方は↓楽天で購入すると送料無料でオススメです。
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お葬式の時のための、1着としてどうぞ。
お葬式のシャツもユニクロで
男性の喪服(お葬式の服)はユニクロがおすすめ! | 考える葬儀屋さんのブログ
という記事を書いて結構読まれているのですが
ユニクロにもお葬式に着ていける、良いシャツがあります。
ただし男性向けです。
既製品の場合
2024年になって1000円値上がりして3,990円になりました。
ユニクロからは色々な素材のシャツが販売されていますが、最もなめらかで、それゆえフォーマルとされるブロード素材のシャツを選ぶのが正解です。
ただ商品入れ替えによってリンク先の商品もなくなってしまうかもしれないので、売り切れていた場合は
都度ユニクロのシャツのトップページから上記の条件に合うものをさがしてください。
繰り返しますが、間違ってもオックスフォード素材で襟がボタンダウンのシャツは買わないように。
レギュラーカラーか、セミワイドカラーがおすすめです。
セミオーダーメイドの場合
ほとんどの方はユニクロ既製品一択で良いと思いますが、
標準体型に比べて、腕が長いなど特殊体型で、時間に余裕のある方は
ユニクロのシャツのセミオーダーメイド
で、お選びになると良いでしょう。
コットン100%でありながら、ノーアイロンタイプです。
これで既製品と同じ2,990円(このシャツだけネット購入すると4,990円以下ということで送料490円かかります。2枚なら無料です。)
実際に注文してみました。
購入した理由なのですが、普段着ているボックス型ではなくフィット気味でデイリーに使えるシャツがほしいと思ったからです。
私は身長184㎝、体重73㎏、バスト104㎝、ウエスト76㎝です。首回りサイズ39㎝、裄丈86㎝なので、国産既製品は合わないことが多いです。
まず、ユニクロ|カスタムオーダーシャツのページへ。
フィット感を選びます。
先ほど申し上げたように、スリムタイプを選びました。
襟(カラー)はレギュラーか、セミワイドです。ユニクロはエリの長さが短めなので
エリ先がスーツのラペルに届くバランスを考えて、セミワイドにしました。
色はブルーも選べますが、当然白。
私は自分のサイズを把握しているので、サイズ表を使用します。
把握できていなくて、ユニクロの既製サイズのシャツを持っていない人は、
自分で採寸はけっこう難しいので、一度ユニクロのお店に行って採寸してもらうのがベストです。
ボディサイズはMかLで迷いましたが、ここはタイトに攻めてMにしました。
サイズ表を見ると、Mサイズの身幅(正面から見た場合の横幅)は53センチとなっています。
つまり体幹回りが53㎝×2=106㎝を超えると、理論上ボタンがはじけるということになります。
このあたり微妙な体型の人は注意してください。
またボディがMだと、首回りは39・40・41から
袖丈は86㎝までという制限があります。
オーダーだからと言って、あらゆるサイズが選べるわけではないのです。
高級シャツのようにオーダーを受けてから製造をするのではなく、たくさんのパターンを需要に応じて作ってストックしているという仕組みだからです。
そうすることによって、3日での配達と高いコストパフォーマンスを実現しているわけです。
また首回りは39㎝か40㎝で迷いましたが、手縫いで立体的に作られてはいないだろうから、余裕を持って40㎝にしました。
3日後届きました。
良かったところ
素材は、同価格のAmazonのものと比べても良いです。倍の金額のメーカーズシャツ鎌倉に匹敵するのではないでしょうか。
フィッティングはピッタリでした。
オーダーなので当たり前と言えば、当たり前なのですが。
悪かったところ
誤算としては、ピッタリ過ぎて胸ポケットにボールペンなどのモノを入れることができません。
でも、そもそも高級シャツはそもそも胸ポケットついていませんからね。
胸ポケットにモノをいれるのは、あきらめました。
またエリの裏にカラーステイというプラスチック板を入れなければいけません。
安いシャツなら最初から縫い込まれています。高いシャツはクリニーングに出すので、白洋舍レベルのクリニーング屋さんであれば、クリニーング後にお店側が新しいカラーステイを入れてくれます。
でもこのシャツはノーアイロンタイプなので、自宅での洗濯が前提です。そうなると洗濯前にカラーステイを抜いて、選択後にカラーステイを入れるという作業をしなければなりません。
入れっぱなしだと、エリの生地が傷みやすくなります。
カジュアルに、ふわっとしたエリで着たい人は、そもそもカラーステイを使わなくてもいいいのですが、ピンと伸びたエリでフォーマルに着たい私の場合は、必須なのです。
この作業が少し、面倒。
総合的は3,000円とは思えない、とても満足なクオリティでした。
3日ほどのかかるので、急ぎの場合は店舗で購入してください。
焼香をきれいに見せたいならシャツのインナーにこれを着ましょう
突然ですが、
格好良く焼香するポイントは、上体の姿勢にあります。
立っているときはもちろん、礼をするときや座っているときも、上体がまっすぐ伸びていると美しくみえるのです。
どうしても姿勢が悪くなってしまう方は、シャツのインナーに姿勢矯正シャツを着ておくという方法もあります。
密着感があり、夏は大変暑いのですが、焼香の作法が美しく見えます。
くわしくは↑こちらの記事をお読みいただきたいのですが
おすすめの姿勢矯正下着を以下紹介します。
男性用女性用それぞれサイズに合わせて選んでください。
サイズに迷ったらピッタリめを購入することをおすすめします。
注意点としては盛夏のときはおすすめしません。
皮膚に密着するため体温がかなり上がります。
式場内はクーラーが効いていると言っても汗だくになってしまいます。
冬は逆に暖かいです。
ジャケット無しでシャツだけの姿はやめてください。
夏場は暑いからジャケット無しでシャツだけ、もしくはブラウスだけというのはマナー違反です。
ちゃんとジャケットを着ましょう。
下記の記事をお読みください。
以上、お葬式のシャツとブラウスの話でした。
シャツは物理教師さんでも消耗品の価格なんですね~。ちょっと安心(謎
かかし 様
現場の時は流石に(^^;)