ベストセラー 「本当の自由を手に入れる お金の大学」で有名な、リベラルアーツ大学の両学長が、自身のYouTubeで、お葬式のことについて語っていました。
「ぼったくられない」とタイトルでうたっておきながら、結果的に視聴者がぼったくられる方向に誘導しています。
現時点で14万人が視聴していますが、残念ながら「これならやらない方がまし」という内容です。
もちろん彼に悪意はなく、というより善意でやっているだけに問題は深刻です。
・どこがダメなのか
・なんで彼ほどの人物が、やらかしてしまうのか
について解説します。
目次
両学長とは
両学長の著書、「本当の自由を手に入れる お金の大学」をKindleで読んだことがあります。
お金を増やす内容に関しては、投資を長くやってきたこともあって既知の内容でしたが、間違ったことは書かれていないし、投資・労働・節約など網羅的な内容で、マーケティング戦略がよくできているという印象でした。
ベストセラーなのも納得です。
とても頭の良い人なのでしょう。
それなのにお葬式のことになったとたんにこのレベルなのか、というのが動画を見た感想です。
とはいえ他の人も同様にやらかしているケースを、過去に何度か見てきており、このブログでも都度指摘し、ある意味「典型的な構造的問題」なのです。
問題点の指摘
では、間違っている解説箇所を指摘していきます。(下記の動画をクリックすると、該当箇所から再生されるようになっています。)
①事前に調べておきましょう
②(葬儀費用の)相場を知る
③比較する
という戦略まではとても正しいです。日頃の私の主張と同じです。
しかし、これ以降の具体的な戦術が間違っています。
②の葬儀費用の相場情報として、日本消費者協会が当時発表していた195万円という数値を紹介するのは悪手です。
日本消費者協会の葬儀費用の発表数値は、実際よりもかなり上振れしています。
原因は、上記の記事にも書いていますが
- サンプル数が少ない(2003年のアンケートの近畿地方の葬儀一式費用の項目の回答者は1人!)
- 葬儀費用を払っていない人にも答えさせている(「葬儀費用は○○円かかった」と誰かが言っていた、という伝え聞いた金額を回答した場合も有効にしている。つまり葬儀費用を払ったことがない人にも回答させている。実際に支払ったことがない人が回答者の過半数を占めている場合も)
にあります。
両学長が紹介した第11回のアンケート結果は、業界全体で葬儀費用が明らかに下落している状況にもかかわらず、前回の数値より高くなるというあり得ない内容でした。
さすがにマスコミもおかしいと思ったのか、第11回の数値はほとんど引用されていません。
この数値を積極的に喧伝したのは、ボッタクリの葬儀社くらいでした。
自社の割高な葬儀費用を正当化できたからです。
結果的に両学長は、実際の相場よりも上振れした高い葬儀費用の数値を、視聴者に刷り込んでいます。
③の比較方法の中で、「小さなお葬式」「よりそう」「価格.com」などの葬儀社紹介サービスを推奨しているのも悪手。
「NHKで特集されていて結構有名みたい」というフワっとした根拠です。
自分もテレビに何度か出ているため分かるのですが、テレビ局が取り上げる基準もかなりフワっとしています。
葬儀社紹介サービスの問題点はこのブログで過去何度も指摘しています。
要約すると
- モラルがなく、消費者をミスリードする広告が多い。
監督官庁がないのでやりたい放題。シェアトップの「ちいさなお葬式」が無法状態のため、後続も無法状態にならざるを得ない。たまに消費者庁が摘発してくれる。 - 紹介葬儀社のクオリティが担保されていない。
葬儀社紹介サービスに葬儀費用全体の20%以上もの紹介手数料を払わないと仕事が来ないゾンビ企業が多い。
そもそも病院出入りの業者を判断基準にしているのはおかしいし、葬儀社紹介サービスに登録している葬儀社がそれらよりマシという根拠もありません。
つまり両学長は、ダメな葬儀社に高い葬儀費用を払うように誘導しているのです。
なぜやらかしてしまうのか
ではなぜこのような間違った解説がはびこってしまうのか、構造的な問題を解説します。
ニーズがある
この動画を作成したきっかけは、視聴者からお葬式のことを語ってくれ、というリクエストが多かったからだそうです。お葬式は誰もが関わらざるを得ないですし、大金が動くので、葬儀費用の解説記事はニーズが高いです。
分かった気になりやすい
お葬式は誰もが経験するので、そのときの見聞を含めて、お葬式を「少しかじった状態」にもかかわらず、ダニング・クルーガー効果で「分かったという勘違い」を起こします。
ダニング・クルーガー効果とは、ちょっとかじったヤツほど全て分かったように勘違いしやすい現象です。
↓例えばこの人とか。
そしてお葬式という商品は何度も購入するわけではないので、その後知識や経験が増えないため、その勘違いをずっと継続します。
葬儀業界をなめている
「ぼったくり」という言葉でよく形容されることから分かるように、葬儀業界に対し、粗野なヤツが雑な商売をしているというイメージを持つ人も多いでしょう。
潜在的に穢れ思想による差別意識を持っていると、さらにこのイメージは増幅されます。
つまり、葬儀業界を「なめている」状態。
たとえば金融分野であれば、今年からNISAを始めた人が日本経済が分かった気になっても
「さすがにもうちょっと調べてから発言しないとまずいのでは?」と思いとどまるはずです。
しかし葬儀ネタは結構雑に語ってもいいだろう、と思われがちです。
自分は頭がいいと思っている人ほど、困っている消費者に対し自分の知見を提供してやろう、という状況になりやすいです。
例えば↓この人とか。
両学長の場合は、動画を観る限り、葬儀体験情報すらなく、検索上位のアフィリエイト記事(≒ヨイショ記事)をざっくり読んで「これで、それっぽく語れるかな」という判断したのではないでしょうか。
葬儀業界側の問題
こうなってしまうのは、葬儀業界側にも問題があります。
葬儀業界内のポジショントークが多い
消費者が情報を持っていないことをいいことに、自社に有利な間違った情報を流す葬儀社がいます。
零細葬儀社の社長が「大手葬儀社はやめとけ」と言ってみたり、とか。
これでは、消費者の不安や不満は高まります。
ニュートラルに情報を発信する中の人が少ない
企業がポジショントークをしてしまうのがある程度仕方がないとしても、ではニュートラルに情報を発信している葬儀屋さんがいるかというと、そうでもない状況です。
私は15年以上情報を発信していますが、同じ志を持つ人はむしろ減ってきている印象です。
・業界の斜陽化で仕事がさらにハードモード
・文章書くのが苦手な人が多い
などの理由が考えられます。
世間は葬儀屋の言うことを信用しない
普通は、税金がテーマなら税理士が語ります。病気のことなら医者が語ります。
しかし上記の状況だと、葬儀に関して、世間は葬儀の専門家である葬儀社の言うことに耳を傾けず、知識人やインフルエンサーの言うことを信じるようになります。
結果、なんかよく分からない間違ったアドバイスが世にあふれかえるのです。
葬儀社選びなどの正しいお葬式の情報を知りたい方は(手前味噌で恐縮ですが)
このブログか、私の著作をお読みください。
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