互助会の問題点を全てまとめてみました

これまで互助会について書いた記事の内容を、まとめてみました。
一読いただければ、互助会と互助会の問題点が全てわかるようになっています。

これから互助会への入会を考えている方、
既に互助会会員の方に、お読みいただきたいです。

記載されている参照記事と併せて参考にしてください。

互助会とは

互助会は、主に葬儀、結婚式、場合によってはホテルなどを運営する企業です。
最近の少子高齢化によって、葬儀の占める割合がとても高くなっています。

互助会の特徴

互助会が普通の葬儀屋さんや結婚式場と異なるのは、割賦販売法という法律に基づいて事前に会員を募り、お金を預かる仕組みを持っていることです。
葬儀が必要になったときにその積立金を使うことができます。会員になると葬儀費用が通常価格よりも大幅に割引になることをセールスポイントとして、集客します。

互助会の歴史

互助会の歴史は1950年代に始まります。戦後の混乱期を経て、高度経済成長期に入ろうとしていた日本で、冠婚葬祭の相互扶助を目的とした組織として誕生しました。

当時、地域コミュニティの付き合いが機能していたため、結婚式や葬儀には多額の費用がかかり、まだ貧しい多くの一般家庭では突然の出費に対応することが困難でした。毎月少額を積み立てることで将来の冠婚葬祭に備えるという互助会のシステムは、時代のニーズに合致し、急速に普及していきました。

1960年代から70年代にかけて、互助会は全国各地に広がり、会員数を大きく伸ばしていきます。この時期、多くの互助会が自前の結婚式場や葬儀会館を建設し、発展していきました。

1973年には割賦販売法が改正され、事前に分割でお金を積み立てる仕組みである互助会は、経済産業省の監督下に置かれることになります。

1980年代のバブル期には、互助会は更なる成長を遂げ、さらに豪華な式場や会館を次々と建設します。1990年代初頭には、互助会の会員数は2,500万件を超え、ピークを迎えます。

しかし、バブル崩壊後の日本経済の低迷と、婚礼や葬儀産業の衰退など複数の要因によって、苦境に立つ互助会が増えてきています。

互助会の規模

全国に約240社ある互助会には、2,370万件もの契約があり、積立金の総額は2兆3,000億円を超えると言われています。
このことからわかるように、普通の葬儀社は中小企業が多いのに比べて、互助会は売上数十億~数百億単位の大手企業が多いのが特徴です。

これだけの規模を持つ互助会ですが、実は深刻な問題を抱えているのです。

互助会の問題点

では、具体的に互助会のどこが問題なのでしょうか。
過去に書いた互助会の記事から、互助会の問題点をまとめてみました。

問題の本質は制度疲労

互助会の本質的な問題点は、その制度が時代に合わなくなってきたことにあります。
事前に会員のお金を集めて、それを元手に拡大路線を取るという仕組みが制度疲労を起こしているのです。
その影響は多岐にわたり、経営、労働環境からコンプライアンスに至るまで、様々な問題が表面化しています。

預けたお金が半分戻ってこない

互助会が潰れてしまうと、預けたお金が半分戻ってこないというのが、最大の問題でしょう。
積立金の半分の保全しか義務付けられておらず、残りの半分については互助会が自由に使うことができます。
30万円預けていたとして、もし互助会がつぶれてしまうと、15万円しか会員に戻ってきません。
互助会の勧誘員は、入会時の説明責任を果たしていないので、会員の多くはその事実を知りません

経営不振(2割債務超過)

業界全体の約2割の互助会が債務超過に陥っているという報道が、週刊ダイヤモンドでなされました。
つまり、資産よりも負債が多い状態であり、いつ潰れてもおかしくないということです。

潰れてしまうと、半分しかお金を返してもらえなかった会員が騒ぎ出し、経済産業省が責任を問われてしまいます。そのため経済産業省は弱った互助会を、健全な互助会と合併させています。その結果、健全な互助会まで経営が悪化する可能性があります。
本来回復の見込みのない互助会は潰したほうが良いのですが、経済産業省の官僚は、自分の任期中だけ延命させたいのでしょう。

例えば、業界の大手であるメモリードグループの一社であるメモリード東京の場合、コロナ期の経営状態は、185億円という大きな売上高にもかかわらず、営業利益はわずか100万円でした。
結局別のグループ会社と合併することで、メモリード東京は消滅してしまいました。

監督官庁が機能しない

先ほど述べたように互助会を形式的に監視しているのは経済産業省です。しかし金融庁が金融機関を厳しく取り締まっているのと比較すると、ほとんど機能していません。

割賦販売法のみ

経済産業省が監督する根拠となっているのは、割賦販売法だけです。そのため経営に対する細かいコンプライアンスが効いていません。

経産省との癒着(天下り)

経済産業省は互助会の天下り先となっているため、厳しい監督や指導が行われにくい状況にあります。
例えば預り金の管理組織である互助会保証株式会社という組織があるのですが、同社の社長は経済産業省トップの事務次官が天下っていました。
彼は週刊ダイヤモンドのインタビューで、債務超過の互助会への対応について
「利益を上げろ。それが駄目なら増資しろ。それでも無理なら2015年までに事業を他社に譲って廃業する計画を出すよう指導している」
と述べています。しかし、
「なぜ事業を引き受ける企業が現れると言えるのか」
という質問に対しては
「われわれが指導するからだ」
と答えるのみで、具体的な根拠は示しませんでした。

(参考記事:互助会がやばい理由  )

大手なのにコンプライアンスがゆるい

上記の経済産業省の監督が甘いことも有り、大手互助会のほとんどが、以下のような深刻なコンプライアンス上の問題を抱えています。

一族経営による問題

多くの互助会は、割賦販売法に守られた大手企業であるにもかかわらず、一族経営で運営されており、その経営状態は極めて不透明です。

前述したメモリードも、創業者の4人の息子が、それぞれのエリアの互助会を任されています。

週刊ダイヤモンドの取材に対して、メモリードは財務情報の開示を拒否しました。
公的制度に助けられて発展したのに、私物化意識が強いのは問題です。

経営状態が分からない

財務諸表の信頼性にも大きな問題があります。互助会は大手企業ですが、上場しているのは数社のみで、経営状態の実態が外部からは見えにくくなっています。
週刊ダイヤモンドが開示請求するまで、会員にできることといえば、一部の互助会のバランスシートがを官報で閲覧するくらいでした。

解約時に積立金の2割返ってこない

もし自分の入会している互助会の経営状態が不安になって、解約したとしましょう。
しかしその場合、積立金の2割近くが手数料として差し引かれてしまいます。
つまり30万円預けていた場合、解約時に6万円が引かれてしまいます。まだ何のサービスも受けてないのにこれは、高過ぎです。

これまで泣き寝入りするしかなかったのですが、消費者団体訴訟制度(少額だが被害者が多数にのぼるサービスを提供している業者に対して、消費者団体が被害者に代わって訴訟を起こすことができる制度。)ができたことで、互助会のセレマが訴えられました。

その結果、最高裁で違法判決が出されましたが、多くの互助会は「セレマはダメと言われたけど、ウチが言われた訳では無いから」という姿勢で、2割引きを止めていません。

(参照記事:互助会の解約手数料は高過ぎだと、裁判所に認定されるまで
(参考記事:結局互助会の解約手数料は格安になるのか、を調べてみたところ・・・

死んだら積立金取られっぱなし

会員が亡くなったのに、入会の事実を周囲が知らなかった場合、その積立金は使われることなく、ずっと互助会が保持したままです。

解約させてくれない

互助会は、わざと解約させないように立ち回ります。おそらくマニュアルがあるのでしょう。
解約窓口電話は、ほとんどつながりません

私が実際に経験した事例です。
(参照記事:互助会に解約したいと電話してみたところ・・・
解約を希望した高齢の親戚の代わりに互助会に電話をかけましたが、
「経済産業省の指導で書類は送れない。直接本人の来社が必要」
という明らかな虚偽の説明を受けました。
経済産業省に確認したところ、
「商品の十分な説明を行うよう指導はしていますが、解約書類は郵送してはいけないという指導はしていません」
とのことでした。
この事実を互助会に伝えると、態度が一変して「送ります」と言い出したのです。

↓またこの記事を読んでいただければ、互助会の経営者が解約希望者に対してどのように思っているか、お分かりいただけるでしょう。
互助会解約者を罵倒する互助会社長 – 考える葬儀屋さんのブログ

労働環境(業務委託扱い)

例えば業界最大手のベルコでは、7,000人以上の従業員のうち、正社員はわずか32人しかいないのです。
残りの従業員はすべて「個人請負」という労働形態で働いています。
これでは労働基準法など労働法規が一切適用されず、解雇規制もなく、失業保険給付もありません。労働組合を組織して使用者に団体交渉を申し入れることもできず、時間外、休日、深夜労働手当もなく、有給休暇もありません。
最低賃金も適用されず、年金や医療保険もすべて自己負担となっているのです。

(参考記事:互助会最大手ベルコの謎 – 考える葬儀屋さんのブログ

営業が説明責任を果たさない

互助会は主に、会員勧誘部隊と葬儀施行部隊に分かれます。
会員勧誘部隊は、保険の勧誘員をイメージいただければと思います。
保険の勧誘員に対しては、金融庁がかなり厳しく目を光らせていますが、互助会は監督機能が甘いため、やりたい放題になっています。

例えば「会員になると、火葬場を優先的に予約できる」といったウソを言ったり、
積立金の半分しか保全されないことを説明しなかったりするケースがあります。

葬儀が行われるのはずっと先のはずなので、目先の営業成績欲しさにウソをつくのでしょう。

また、「会員価格は半額」と謳いながら、その定価を市場価格より著しく高く設定しているケースも多く見られます。
(参考記事:互助会紹介ポータルサイト「ごじょクル」への疑問

正体を明かさないで葬儀社紹介業を行う

小さなお葬式」という葬儀社紹介業者がいます。
これはインターネット上で葬儀社を探している消費者を集客し、葬儀社に紹介し、紹介手数料を得ている組織です。
優良な葬儀社を紹介すると言いつつ、この「小さなお葬式」は大手互助会アルファクラブの子会社です。
元アルファクラブのスタッフから
「高額の葬儀依頼は優先的にアルファクラブに流している。」
と聞きました。
葬儀社の紹介がフェアに行われているとは思えません。
経済誌にスッパ抜かれましたが、それでもサイトではアルファクラブの子会社であることを隠しいています。
近年はライフアンドデザイングループという大手葬儀社を傘下に納めました。これも公にしていません。

別に安くない

互助会の中には「会員価格は半額」と謳っているところがあります。
実際にはその基準となる定価が市場価格より大幅に高く設定されていることも多いため、実質的な割引効果は限定的です。

会員の葬儀はそれなりの請求を行うのに、葬儀社紹介業からの紹介葬儀は安く行うというのも、一物二価とまでは言いませんが、会員は腑に落ちないでしょう。

また預けている30万円~60万円の積立金だけで、葬儀ができることは、まずありません。
葬儀が終わってから。追加費用を請求されます。
前述した葬儀勧誘スタッフの中には、
「積立金だけで葬儀ができる」というミスリードを行う人もいます。

葬儀の質を上げるインセンティブが働かない

互助会の葬儀施行部隊には、良質な葬儀を提供するための動機付けが働きにくいという構造的な問題があります。
すでに会員契約により葬儀依頼が確定しているのであれば、従業員は、あえて良い葬儀をしようとは思わないでしょう。
最近のコストカットの一環として葬儀を外部業者に丸投げするケースも見かけます。

さらにサービスは低下しているはずですが、2割の解約料金を払ってまで解約しようと思う会員は少ないので、サービスの質を維持・向上させる競争原理が起きず、悪循環に陥りがちです。

大手互助会のアルファクラブは遺体を間違えて火葬するというあり得ないミスを、10年間に3回起こしています。

(参考記事:大手互助会アルファクラブ武蔵野さんが運営する葬儀社さがみ典礼が「また」やらかした理由

会員が減少

高度経済成長期には右肩上がりで増えていた会員獲得の伸び率が、近年は減少傾向にあります。
葬儀の簡素化志向も会員減少に拍車をかけています。
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会館の維持費問題

前述したように互助会は積立金の半分しか保全せず、残りの半分は会館建設などの投資に使ってきました。その成果としてバブル期には豪華な会館たくさん建てられましたが、その後葬儀の小規模化により、その大きさを持て余すようになりました。
維持費用が重荷になり、経営を圧迫しています。

良いところ

このように多くの問題を抱える互助会ですが、良い面について触れておきます。

先ほど述べたように、施設面では、豪華な葬儀会館を多く保有しており、大規模な葬儀にも対応できる設備が整っています。
ただ、前述したように、これが互助会の経営を危うくもしています。

まとめ

私は非互助会系の葬儀社に勤めていますが、互助会の現場のスタッフには友人もたくさんいます。
そして同じ葬儀屋さんとしてシンパシーを感じています。彼らは料理人と同じで腕があれば、どこでも雇ってもらえる人たちです。

しかし、互助会の体質には大きな問題があると言わざるを得ません。

互助会という仕組み自体が、今となっては無理があるのではないか
というのが、私の意見です。
市場原理に任せて、ダメな互助会はちゃんと潰すべきです。
それができなければ、いずれ葬儀業界全体の信頼を損ない、消費者に不利益が及ぶことになるでしょう。
(参考記事:ダメな互助会はちゃんと潰そう 




2件のコメント

互助会系の葬儀社に勤めているものです。
確かにもう制度として厳しい時代になってきており、頭の痛いところかと思います。
かといって互助会制度を辞めるという道もないでしょうし。

デメリットについてウチの会社であれば当てはまるところも当てはまらないところもありますが。

>葬儀依頼が確定しているのであれば、従業員は、あえて良い葬儀をしようとは思わないでしょう。

この部分については少し疑問なのですが。
考える葬儀屋様では、互助会・非互助会関係なく、葬儀社の社員は葬儀の依頼が確定した段階でいい葬儀をしようと思わなくなるのがデフォルトであるという考えなのでしょうか?

始めてのコメントですが
他業種からの転職でしたので、新人の頃からこちらのHPを観ておりました。
これからも楽しみにしております。

ゆう 様
コメントありがとうございます!
ご指摘の通り、「従業員は」ではなく、「経営陣は」の方が適切でした。
私は採用面接も担当しているのですが、互助会からの転職組が増え
「遺族のためにプラスαのサービスをしようとすると、会社がいい顔をしない」
という話を聞きます。
このあたりは、互助会に限らず葬儀業界全体として起こっている問題かと思いますが…

いつもご覧いただき、ありがとうございます。
今後とも、ご愛読のほど、よろしくお願いいたします。

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