「葬儀屋はやめとけ!」は、本当か。




「葬儀屋はやめとけ!ブラックだから」
という意見をネット上で目にします。

本当なのか、葬儀業界に20年以上在籍する私が解説します。

結論

まず結論から。

葬祭業は素晴らしい職業だと思っている。
でも2010年以降ブラックな葬儀社は増えてきている。
だから「やめとけ!」とは思わないが、就職を考えている人は葬儀社選びは慎重に。

以下、くわしく説明します。

ブラック葬儀屋とは

先日こんな記事が。
新卒離職率が低い、ホワイト企業トップ300 (東洋経済オンライン) – Yahoo!ニュース

さてブラック企業の定義はこんな感じ
ブラック企業(ウィキペディアより)

ざっくりと言うと
①無茶な働かせ方をさせて
かつ
②給料が非常に安い
企業ってことですね。

(「かつ」っていうのに注意。
例えば外資系の為替ディーラーは激務だが高収入なので
ブラックとは言わない。)

実は2010年頃までは
ブラックな葬儀屋は意外と少なかったのではないでしょうか。

もちろん①の無茶な働かせ方については、昔も今も変わっていません。

人はいつ死ぬかわからないので、葬儀屋さんが効率的なスケジュールを立てるのは大変難しいです。
そのため日頃人手を最小限にしておいて、突然繁忙期に突入すると、死ぬほど働かせるというのが
経営者側としては人件費を最小限に抑えるやり方です。

労働組合のある大手葬儀社でも
激務もしゃーないな、的認識は現場サイドにもあったし、今もそうでしょう。
36(さぶろく)協定 の上限越えていても、残業代もらえるならOKという、暗黙の了解があったのです。

そのため2010年以前は激務だが給料はそこそこもらえるという状態でした。

葬儀業界は、給料に関してはちゃんと市場原理が働いていました。

葬儀屋の給料ってどれくらいか、葬儀屋さんが教えます


残念ながら今は「激務で低賃金な」ブラック葬儀屋はどんどん増殖していると思います。

「大手なのに、それはどうなの?」的な噂を耳にするってことは
零細企業などのボトム周辺は結構ひどいことになってる可能性が高いです。
残業

ブラック葬儀屋が増えてきた原因

この変化の原因はおそらく4つです。

  1. 利益が減少した
  2. 労働力としての希少価値が目減りした
  3. スキルのいらない職域の登場によって、労働市場価値が上がらない
  4. 順法精神が薄い

それぞれについて説明します。

1.利益が減少した

全体の傾向として葬儀件数は増えて、単価は下がっています。
この状況で、提供する商品に付加価値を付けず
価格競争に突入している葬儀社は、利益が減少します。

必然的にそこで働く従業員の給料も減ります

2.労働力としての希少価値が目減りした

昔、葬儀屋って普通の人はなりたがらない職業でした。

日本人は穢(けが)れとして人の死をいやがります。
葬儀屋さんは人の死を扱う職業ですから、人気がありません。

だからそれなりの給料を払わないと来てもらえない状況だったわけです。

しかし

  • 職業に対する嫌悪感が(昔に比べると)薄まった
  • 不景気や就職難であふれた人材が葬儀業界に流入するようになった。

という変化がここ10年で起こりました。

その結果労働力の希少価値が目減り
(とはいえ今も昔も志を持ってこの業界に入ってくる人は希少なんですが)
結果、相対的に給料が安くなってしまいました。

3.スキルのいらない職域の登場によって、労働市場価値が上がらない

昔のようにほとんどの業務が、儀式性のある通夜や告別式に関係している場合
新人を現場で使うには半年~1年くらい見習い期間が必要です。
そうして育てた以上、ある程度働いてもらわないと経営上不合理でした。

しかしここ10年で直葬(お葬式は行わないで火葬のみ)がどんどん増えてきました。
個人的には直葬こそ担当者のクオリティが露呈する思うのですが
(参考記事:直葬をするときのコツと注意
「クレームさえつかなきゃクオリティなんてどうでもいい、
どうせ火葬するだけだろ」
という経営方針の会社なら
1ヶ月くらいの研修で現場に投入して、ずっと直葬の担当をやらせることも起こりえます。

当然ずっとスキルがないままで、安く使われる状態が続きます。

4.順法精神が薄い

歴史的にアウトサイダー的な人が多かったので、順法精神が低く
労働基準法を守りません

労働基準監督署にいつ査察に入られても大丈夫です、という葬儀社はおそらく10社も存在しないでしょう。

「有給休暇って実在するの?」という世界です。

最近は正社員としての最低賃金の状態でサービス残業を積み上げ、
1~2年激務をやらせて潰す、
という方法を取る葬儀社も出てきました。

これなら外部派遣を雇うより安上がりです。

余談ですが
管理職になったとたん、給料が思いきり下がる賃金体系にして
辞めるのを待つ、っていう葬儀社もあるそうですね。

かつて問題になったマックの名ばかり店長と同じ世界。
残業1

葬儀屋さん選びは慎重に

そんなわけで、現在葬儀業界もブラック企業が急増している
という印象です。

もちろんちゃんとした葬儀社もたくさんあります。

なにより葬儀屋さんを、私は素晴らしい職業だと思っています。

まったく葬祭業のことを知らない学生さんに短時間で興味を持ってもらうにはどうしたらいいか?

だから、葬儀社で働くのはやめとけ!とは思いません。

とはいえ葬儀業界へ就職を考えている方は
就職する葬儀社選びは慎重にしてください。

そしてもし就職した葬儀社がブラックだったら、すぐに別の葬儀社に移りましょう。
葬祭業は男子一生(もちろん女子も)の仕事に値すると私は考えています。
だからその葬儀社を辞めたとしても葬儀業界にはずっといていて欲しいなぁ、と思うのです。
お願いします!

葬儀社への就職、転職をお考えの方は↓こちらのページをどうぞ。

葬儀社に就職・転職するその前に…葬儀屋さんがアドバイスをします











11 件のコメント

  • 葬儀社のブラック・ボックスには「待機問題」があります。
    大手であれば待機時間は勤務時間との認識もありますが中小、特に小規模事業者では「待機時間は勤務時間」との認識がありません。
    休日待機や夜間待機は拘束があるために、判例から見ると微妙であり、スフとを組んで社内待機や勤務ではなく「転送電話待ち」をしている事業者(全体の70%程度?)は労基法上は?

    ブラック企業の増加は亜型と変異型の増加によると思います。
    亜型は「他業種参入型」であり既成葬儀社や葬儀業界は「問題があるので始めたタイプ」です。
    変異型は「既成葬儀社より発生」ですが、やはり他葬儀社や現葬儀形態は「問題があり弊社は違う」とアピールをするタイプです。
    共に、メディアやネットを巧みに利用しており、271万円問題を広告(我が社はこんなに安い、他社は悪いが我が社は優良等)をする傾向がありますが、実際に施行を依頼すると+αが大きく、見積もりの数倍にもなる場合もあります。(フッシング型)

    両タイプ共に、経営者と社員のスキルと意識が低いと思われる会社が多く(稀に優秀なヒトに出会うが)、
    葬儀終了後に猜疑心や失望感が生じるために、二度と同じ葬儀社を使わない問題に通じるところがあります。
    第3世代では問題意識が高まり、大きな改善があり第4世代に突入しましたが、改善よりも現実路線に変異した葬儀社が良い意味では「廉価葬儀」、悪い意味では「葬儀意義の希薄」を加速化させました。

    葬儀業界の2極化は自然の流れであり、資本主義社会では当然の権利ですが、国民や市民には分かりません。(見積書比較は素人騙し)
    三越で買えば20万円のテレビも、ヤマダで買えば13万円かもしれませんが、20万円で買う人がいます。
    価格だけでない部分に気が付けばブラックも減るのですが。

  • prof様、
    >葬儀社のブラック・ボックスには「待機問題」があります。
    そういうところで働いていて、私の会社に採用面接受けに来る人たちが居るんですが
    話聞くとホントひどい待遇みたいですね。
    実質時給数百円か、という状態みたいで。
    ちゃんと社員教育もされずほったらかしなので
    中途入社でそのスキルでは・・・という感じで採用するわけにもいかないし。
    就職希望者用の記事でも述べていますが、就職するときはちゃんとスキルアップさせてくれるところを選ばないといけません。

  • 現場の物理教師さんが最も感じていると思いますが、葬儀業界の2局化が進んでいると思います。
    一方はスキルやコンプライアンスを上昇させ、他の一方はスキルやコンプライアンスを無視して「目の前の仕事をこなす、数多く流す」となり、内面的な部分ではレベル格差が拡大しています。
    どちらに属しても1級位は受かるでしょうが、何処で働いたか、何処で誰に指導されたのかが重要となります。

    公費で行う警察業務でも大きな差が出ています。
    警視庁は予算、人員、装備等は他の道府県警察とは比べ物にならないレベルであり、スキルも違います。
    http://www.police.pref.gunma.jp/keimubu/08kouhou/15koukai/keimubu/64.pdf
    上記群馬県警訓令を見ればわかりますが、やっと「司法解剖遺体搬送費の遺族負担を止める」ことになりました。(検案書1通も公費負担となった)
    警視庁から見れば50年遅れており、搬送費では5~7年、数万円の遺体修復費(化粧修復)においては今回も新設されていません。
    東京都庁である警視庁と群馬県庁である群馬県警を比較するのは酷ですが、差は歴然であり差は開く一方です。

  • prof様、
    >やっと「司法解剖遺体搬送費の遺族負担を止める」ことになりました。
    えっ、今まで遺族負担だったんですか?
    知りませんでした。
    そりゃここまで締め付けてるんなら
    日本に解剖が根付く訳がないですよね。

  • 司法解剖費用の負担は国と自治体比率が通達されていますが、それ以外は無しですので自治体判断です。
    そのために、解剖前で大学までの搬送は「警察車両が多く」、解剖が終われば「遺族負担を強いている自治体もあります」。
    拒否権の無い行政検死と行政解剖も、横浜方式では「遺族負担」です。

    政府と警察、医学界ではAIを進めていますが、AI検査費用の約6万円と施設までの搬送迎費用は誰が出すのかも分かりません。(新しい監察医務院は無料?)
    お金がある東京都でひき逃げをされると司法解剖になりますが、貧乏な埼玉県でひき逃げをされると司法検視だけとなる場合もあります。
    行政解剖や承諾解剖に関する公費支出も自治体判断であり、名古屋市では「年間5体までの予算」しか計上していないと思います。

  • 福岡市のラックという会社から、新人が来た。冠婚葬祭のちらしを受け取れと強引に進めるので切れた。うちには年寄りがいる。チラシをもらったら、家族はどう思うか。早く死ねと言うのか。葬儀屋さんはモラルを持ってほしい

  • prof様、
    >拒否権の無い行政検死と行政解剖も、横浜方式では「遺族負担」です。
    これでちゃんと「解剖」をしてくれているなら、まだいいんですけどねぇ(T_T)
    AIだと解剖に比べて遺族の心理的抵抗も少ないので、
    自治体としては遺族負担にしやすいのではないでしょうか。

  • 金沢のAIセンターは、56,000円だったと思います。
    警察としては葬儀社に対して「無料で送迎しろ」と言うと思いますが、「直送」(9万円プラン等)であれば如何するのか(載せられない)と思います。

    色々な部分があり葬儀価格がありますが、スケルトンにすると葬儀も経営も成り立ちません。

    火葬だけを葬儀と考えると別ですが。

  • prof様、
    >金沢のAIセンターは、56,000円だったと思います。
    うーん、妥当なところなんですかね。

  • 最終決定はしていませんが、東京都23区内は「AI検査費及び搬送迎費、死体検案書費は無料」(東京都庁が負担)となる見通しです。(都条例に基づく遺体)

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